「舞台はつらいよの巻」(ジャンプ・コミックス第117巻収録)

今回は、両さんたちが『こち亀』の舞台劇で自分自身を演じるお話をお届けする。

本作が描かれたのは1999年。当時「舞台版こち亀」が公演されていたことを受けてのエピソードだ。今でいうところの「2.5次元化」を『こち亀』では1990年代から行っていたわけだ……。だが、作中では本物の出演者の代わりに両さんが両さんを演じるというのだから、いささかややこしい。

創作物である『こち亀』が現実の世の中で舞台劇として制作され、そこに創作されたキャラクターである両さんが出演し、それを漫画として描くという、現実とフィクションの交錯を幾重にも描いた構造となっているのだ。

なお両さんは劇中で「両津勘吉役」のほかに「向島巡査役」も一人二役で演じているが、この人物は舞台版のオリジナルキャラクターだ。

ちなみに『こち亀』には、舞台上でお話が展開するエピソードがもう一作存在している。「よみがえる軽演劇!の巻」(ジャンプ・コミックス第68巻収録)がそれだ。

こちらは、「もし『こち亀』が舞台劇だったら」という見立てで構成されている。舞台全体を見渡すような横イチのコマ割りが全編を通して続き、観劇している客の話し声や笑いまでが描写されており、読者はまるで現実の舞台劇の客席にいるか、もしくはテレビかビデオで舞台劇を観ているかのような、非常に凝った作りの一作だ。

「よみがえる軽演劇!の巻」より。舞台上のセットを回転させて別のシーンに切り替える様子まで描写されている。また、両さんが「本当はここに壁があるんだぞ」と、舞台劇のお約束である「見立て」に言及するコマも……
「よみがえる軽演劇!の巻」より。舞台上のセットを回転させて別のシーンに切り替える様子まで描写されている。また、両さんが「本当はここに壁があるんだぞ」と、舞台劇のお約束である「見立て」に言及するコマも……

それでは次のページから、舞台版『こち亀』に出演した両さんの奮闘ぶりをお楽しみください!!