「テレビより刺激的なんだ」

アニメーションといっても質の高いものではなく、いわゆる「漫画動画」という形式で、1枚絵に声を当てて進行する紙芝居のようなものだ。

事件やスキャンダルの裏取りはされていないようで、あるチャンネルの概要欄には「このチャンネルでは実話を脚色して動画投稿しており、実在の人物や団体などとは関係ありません」とまで記されている。

「デタラメな動画ばかり見ている父にショックを受け、やめるようにお願いしましたが、『テレビより刺激的なんだ』と言われました。若者ならともかく、テレビや新聞を信じてきた世代が、なぜこんな怪しいチャンネルにハマるのでしょうか……」

写真はイメージです(Shutterstockより)
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 なぜこのような動画が人気を得ているのか? ネットメディア論を専門とする国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授の山口真一氏はこう語る。

「漫画動画という形式は、日本人にとって非常に馴染みやすいコンテンツだと考えられます。“ジャパニメーション”という言葉があるように、日本人は漫画やアニメとの親和性が高い。そこに有名人のゴシップといった週刊誌的な要素が加わることで、感情を強く揺さぶられる。さらに漫画やアニメな演出で“物語”として視聴できる点も大きい。結果として多くの人を惹きつけているのでしょう」

とはいえ、中にはあまりに内容が酷く、倫理観が外れたようなチャンネルもある。

「テレビ番組には民放連があり、最低限の放送倫理やガイドラインがあります。週刊誌もセンセーショナルな表現はあるものの、企業ですので、信頼と責任は意識します。一方で今は“個人”が自由に情報を発信できる時代です。そうなると、倫理に対する責任を誰が取るのか、常に宙ぶらりんになります。アカウントが消されても次の場所に移ればいいという感覚で運営されているのでしょう」(以下、山口氏)

まさに、フェイクニュースや陰謀論で人々を煽り、そこから利益を得る「アテンション・エコノミー」の典型例といえる。