「TikTokなどをきっかけに日本のアイドルも」
とき宣は2021年春頃、過去にリリースした『すきっ!』が時を越えてTikTokでバズり、現メンバーでリアレンジした『すきっ!〜超ver〜』は昨年5月までの総再生回数が30億回を突破。昨年リリースの『最上級にかわいいの!』は同12億回、『超最強』も同20億回と快進撃を続け、大手企業の広告にも多数起用されている。
上記のグループは「日本のアイドル」でイメージするような特徴を持ち、一般の層が韓国のアイドルグループに抱くであろう印象とは一線を画す。
こうして見ると、日本のアイドルは「オワコン」どころか大流行しているように見えるが、その要因は何なのだろうか。
アイドルを対象とした研究を行なう慶應義塾大学非常勤講師・上岡磨奈氏は、「日本のアイドルはK-POPと対立関係にあるとは考えていません」としながら、日本型アイドルの復権についてはTikTokの影響が強いと語る。
「学生たちにとって『アイドル』といえばK-POPが先に連想されるという実感がありますが、TikTokなどをきっかけに日本のアイドルも印象づけられていると思います。TikTokでアイドルの楽曲が流行れば、アイドルファン以外にも幅広く知られることになりますし、それを見込んだ楽曲作りや振り付けも主流です。『とき宣』や『ふるっぱー』のヒットも、TikTokでの影響が強いでしょう」
今やTikTokはトレンドの発信源と化しており、上岡氏も日常的に学生と接する立場から、若者の流行が多く生まれている印象を持つという。
そのTikTokは特性上、耳に残る楽曲や真似しやすい振り付けが流行しやすい。ブームがここから生まれやすい時勢をふまえれば、TikTokにターゲットを合わせた日本型アイドルの戦略は有効だと言える。
他方で、K-POPアイドルは厳しいダンスレッスンを積む育成システムで知られており、パフォーマンスがハイレベルだとしてファンになる層も多い。ただ、難解な振り付けは未経験者が真似るハードルも高く、動画投稿といった拡散力や“バズ”の形成では不利に働いているのかもしれない。
上岡氏はさらに、「今の学生たちは、『アイドル』や『オタク』といった言葉にかつてのようなネガティブなイメージはほとんどありません」とも指摘する。この点は、特に40代以上と顕著に異なる価値観だそうで、「メンバーカラー文化も、TikTokやInstagramで見る“推し活”の風景に影響を受け、ファンでなくてもやってみたいと思わせる、そんなきっかけが広がっているように感じています」と述べている。
若い世代はアイドル文化に抵抗がなく、積極的に受け入れている。そして日本型アイドルの真似しやすいパフォーマンスがTikTokなどのSNSを通じて広がり、ブームに発展していく。
勢いを取り戻した日本のアイドルグループの魅力に、触れてみてはいかがだろうか。
取材・文/久保慎