「約19.2秒ほど見ていただいたという風に記憶しております」
東洋大によると学生を除籍する要件のうち、田久保市長に該当する可能性があるものは①学費を納入しなかった、②休学期間が4年を越えた、③東洋大で修学する意思がないと判断された――の3つある。(♯5)
田久保氏市長は尋問で「学費の納入の方は4年間しっかりしておりました」「休学届を出したといった記憶は一切ございません」と言明。これらが本当なら除籍は「成績不良」が背景にある可能性が出てくる。どういうことか。
百条委の尋問で四宮和彦市議は、東洋大では成績不良で進級や卒業ができない学生は指導や注意をすると定められており、学生は所定の手続きを取らなければ「就学の意思なし」とみなされる仕組みになっていると指摘した。
すると田久保市長は指導も手続きの通知も自分は受けた記憶がない、と答えたのだ。
証言が本当で大学が定められた措置を怠っていた場合「市長が卒業したと誤認した可能性は十分にある」。そう言って市長の主張にうなずくふりをした四宮市議は続けて「市長に正当性があるのなら東洋大学のミスは非常に罪深い。
いち自治体を大混乱に陥れる事態を引き起こしたわけだから。なぜ東洋大学の責任を追及しないのか」と変化球を投げ込んだ。
それに対し田久保市長は「大学には思い出も愛着もあり、大学に責任があるのにおかしいじゃないかという姿勢で話をするつもりはない」と逃げた。
その東洋大は百条委の照会に回答し、中島弘道市議会議長は「何を出していただいたかは言えないが、結果として卒業証書は偽造だったということははっきり裏付けられた」と明らかにした。
2時間を超えた尋問のハイライトは終了間際に起きた。
6月4日に中島議長らに問題の偽卒業証書を“チラ見せ”で見せ渋ったとされることに田久保市長は「報道であるようなチラ見せといった事実はありませんで、約19.2秒ほど見ていただいたという風に記憶しております」と話したのだ。
「テレビで発言を聞いてひっくり返りそうになりました。なんですか、19.2秒って」(伊東市内の飲食店経営の女性)と市民を呆れさせた0.1秒単位の提示時間の誇示について、田久保市長は尋問後、記者団にこう説明した。
「議長の方には当初の時点から私はちゃんと申し上げておりますが、会話の方は録音の記録を持っております。それで、ストップウォッチで測りました。19.2秒提示した後に議長の方からは『いいじゃん』というコメントをいただいています」(田久保市長)
この発言を聞いた大手メディアの記者は「私がストップウォッチで測った。19秒じゃなくて10秒以下だった」と田久保市長に疑問の声をぶつけた。音声が流出してこのメディアが入手し、実際に聞いて測ったらしい。
このやりとりの後には中島議長が「こちら側も録音していた」と記者団に明かした。どちらが録音した音声が漏えいしたのかは不明だ。
録音がなされた6月4日は田久保市長の当選の10日後で、面談は市長の「就任祝い」として行なわれている。そこで双方は会話を録音し、その状況を外部に伏せようともしない。どれほどの不信が伊東市に渦巻いているのか――。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班