発明は愛

5歳のときに模型飛行機用の画期的な装置を発明したことから始まった、中松さんの発明人生。14歳の麻布中学生のころには母のために、のちの「灯油ポンプ」と同じ仕組みである「醤油チュルチュル」を発明したというエピソードはあまりも有名だ。

「発明は愛。独りよがりに儲けるためではなく、世の中をよくしたい」それが原点だという。

発明の定義をふまえ、中松さんが続ける。

「発明は、なにも“モノづくり”だけではないんです。“見えない発明”もあります。これは、政治や経済、経営に関わる方法ですね。政治とモノづくりという、この2つの発明が同時に進むことで、世の中は初めてよくなる」

なんと中松さん、トランプ関税への対処法も、米不足の解消法も、すでに発明したという。

「トランプ関税対策なんて簡単です。『25%関税かけられても平気な車』を発明すればいい。私なら、日本の労働力をアップさせつつその仕組みを作ることができます。以前『なカーまツー』という、環境にも配慮した低燃費車を発明しましたが、それを改良しましょう。加えて交渉する政治の力も必要ですが、これも私が発明できます」

しっかりとした口調で自身の発明や今の日本について語るドクター・中松(撮影/佐藤靖彦)
しっかりとした口調で自身の発明や今の日本について語るドクター・中松(撮影/佐藤靖彦)

米不足については、目からウロコの着眼点を「発明」。

「意識改革から発明しました。まず、現状の『お米がないことに耐えられない』という思考停止状態を変えます。お米をたくさん食べなくても、私が発明した『サイエンティフィック・フーディーズ』理論を実行して食べ物を選べば、1日1食でもお腹が満足になるし、私のようにいつまでもひらめきが尽きることがない脳と健康な身体を保つことができる」

中松さんは、自らの食事を35年間にわたり撮影し続け、それらがどれだけの作用をもたらしたかを記録し続けたということで、2005年にはイグ・ノーベル賞(栄養学賞)を受賞した。その経験が同理論につながっているとも。

中松さんが続ける。

「そして、もっと米の値段が下がるような栽培方法を進めることです。雨だろうが太陽だろうが、関係なく米を作れるような、“作り方の発明”が必要。それも、私が現場の農家の方々とともに考えましょう。

とにかく、今の日本は、発明心が足りない。思考停止して、ただ嘆くだけだったり、権力を悪用する人ばかりだから」