セルフレジで行われている万引き犯の手口
さらに、伊東氏は以前は中国人による犯行が多かったが、近年はベトナム系が主流になっているという。とくに来日した技能実習生の“ケツ割り”(途中離脱)後、犯行に及ぶケースも多く見られるそうだ。
そして、こうした犯行を後押ししているのが、セルフレジの存在だと指摘する。
「セルフレジって、結局“お客さんを疑わない”という性善説が前提の構造なんです。セルフレジに限らず、世界中の商品売り場はそうした傾向にありますが、例えばアジアのスラム街近くの店などでは、(売り場に入場する前に)荷物を入れるクロークがあったり、レジ周辺が狭く設計されていたり、絶対に通らなければいけない動線がある。そういった構造の工夫で、万引きは物理的に難しくなっています」
セルフレジでは、従来のレジと違い、店員がスキャン内容を直接確認しないため、“スキャン漏れ”や“バーコードのすり替え”といった不正行為も横行する。
「たとえば、バーコードのすり替えには“もやしパス”と呼ばれる方法があります。安い駄菓子や、もやしのバーコードを切って、高額商品に貼りつけ、“もやしとして精算”する手口です」
また、「6本入りのビールを1本分だけスキャンする“単品打ち”」や、「わざと支払いを忘れたフリをして出ていく」といった行為も珍しくない。
「セルフレジが万引き犯にとって“都合がいい”のは、“うっかり”を装えること。普通にバッグに隠して持ち出したら、故意とみなされやすい。でもセルフレジなら、“精算を忘れていただけ”と言い訳ができる」
中には、商品をスキャンするだけして、支払いをせずにそのまま退店する“精算無視”と呼ばれる大胆な手口もあるという。
しかし、セルフレジが完全に“犯人有利”なわけではない。むしろ「証拠が残りやすい」という側面もあると伊東氏は話す。
「セルフレジって、操作のすべてがカメラに記録されているし、AIの分析も入っている。一度やったら必ずマークされる。顔も記録されるし、IDや電子マネーも紐づいている。いわば、万引き犯は“泳がされてる状態”なんですよ」
企業側も、レジ不正を“後日精算”させるような体制を強化している。1回目では動かず、2回、3回と余罪を積み重ねてから、確実に動く──そんな戦略も珍しくない。
「やったらどこかで“必ず捕まる”と思った方がいい。しかも、バーコード偽装の場合、『電子計算機使用詐欺』で窃盗より罪が重くなることもあります」