万引きの補填をしているのは一般の消費者?
とはいえ、すべての企業が十分な対策を取れているわけではない。
「たとえばユニクロなどは魅力的な商品が豊富に陳列されていて、棚が高い、試着室がある、売場面積に対して従業員数が少ない……など、やる側からすれば好条件の環境。あのセルフレジも万能ではなく、現場の店長はずっと気を抜けません」
このように、日本の各店舗が多くの万引き被害にあっているため、「それでなんで潰れないの?」と疑問に思う人もいるかもしれないが、それは“まじめに買っている人”が損失を補填しているからだ。
「つまり、商品の価格に“万引きコスト”が含まれているのです。性善説で作られた売り場を、疑わないことを前提とした社会を、万引き犯が突いてくる。そして、そのツケを払っているのは一般の消費者なのです」
伊東氏がここ数年で特に感じているのは、コロナ禍以降の変化だという。
「コロナ禍で多くの人の生活が壊れた。そのしわ寄せが今、あちこちに来ています。万引きの件数も、商品の量も、明らかに増えている。コロナは本当に社会秩序を壊しました。
ただ、コロナ以前にあった中国人の爆買いブームのとき、何百個と商品をカートに乗せて買いながら、2〜3個だけレジを通さずに万引きするような人もいました。お金を持っているからといって、人は万引きしないとは限りません」
セルフレジの普及や外国人の増加で万引きの手口はますます巧妙化している。だからこそ、安心して買い物ができて、きちんと購入している人が損をしない環境づくりが必要だ。
取材・文/集英社オンライン編集部