デビュー5年目、今、役作りが難しくなってきた
――物語を動かすキーパーソン・龍二役を演じることが決まったとき、率直にどう思いましたか?
キーパーソンだということや物語の先の展開についてはあまり深く考えずに、そのとき、そのときの龍二でいればいいという気持ちで臨もうと思いました。
僕は『梨泰院クラス』も観ていたんですけど、龍二は抑え込まれて育ったから内気な性格ですけど、強い信念を持っていて、自分の人生を生きるために長屋を飛び出す前向きさもあって。でも、好きな人や信頼している人の言葉を前に揺れてしまう、その部分もちゃんと表現したいので、全部を決めずに、その場で生まれるものを大切にして演じています。
――揺るがない部分は準備をしつつ、その場で受け取ったものに反応する余地を残して、撮影に臨む中で役を理解していくのでしょうか。
そうですね。ただ最近、役作りっていうのがよくわからなくなってきているんです。台本はしっかり読むんですけど、人間と人間が対話していたら予想外のことが起こるし。どう感情を出してどう受け取るかとかもその人の個性で、だからこそ現場を大切にしようと思っていて。そのあたりも最近、難しいなって思い始めました。
――「わからなくなってきた」ということは、役者を始めた頃はそういう悩みはなかったんですか?
最初の作品(映画『蜜蜂と遠雷』)では、向き合うものとしてピアノがあったんです。自分が人として伝える今のお芝居だと間を介すものが何もないけど、『蜜蜂』のときは、ピアノを通して相手に伝えることができたので、恥ずかしさがあまりなかったんです。
人の前で弾くシーンでも、自分を見ているわけじゃなくてピアノを聞きに来ていると思えたから、よかったというか(笑)。少しずつ、人の前で演じる恥ずかしさというか見られている意識とか、いろんな考えが出てくるようになりました。
――ひとりの生身の人間として演じる上での悩みや葛藤が出てきたんですね。
邪念が出てきました(笑)。いざ人と一対一で向き合ったら、あぁ、相手はこういう感じで僕を見てくれるんだって分かって物怖じしてしまうとか、そういう感覚です。『蜜蜂』のときも一対一の演技はありましたけど、当時は、何もわからなかったっていうこともあって(笑)。
そこから3年と少し経って、いろんな人と出会って、いろんな考え方がワーッて入ってきて……慣れ始めてしまったのかなと思うところもあり、それはちょっと怖いです。日々、悩んでますね(笑)。