勝手に定義した「正しい日本文化」の押し売り
こうした「日本スゴイ」番組群の中でも、TBS系『ぶっこみジャパニーズ』は、放映されるたびにネットで炎上を繰り返していた。この番組は、
和のカリスマが海外の「ニセジャパン」を成敗する! !
正しい日本文化を伝授する『ぶっこみジャパニーズ』第6弾
いま世界中で大人気の日本文化「クールジャパン」!
しかし修業もせずにブームにのっかったニセモノが海外で急増中!
そんなダメダメなニセジャパンに日本が誇るカリスマが正体を隠して潜入調査!
(TBS系『ぶっこみジャパニーズ』公式サイトでの番組紹介文)
――というもの。日本料理・寿司・ラーメンから忍術・生け花まで、その道の「達人」を海外につれていって、現地で展開されている日本料理店・スシ店……などに素性を隠して潜入させ、現地で「うわあ、これが日本料理??」的なしろものを視聴者に印象づけた上で、当該の達人が「これが本当の日本のナニナニ」を見せていくという展開である。
二〇一七年十二月に放映された「第10弾」では、
近年、寿司屋が増え「寿司ブーム」だという南アフリカ。そんな南アフリカのヨハネスブルクで、とんでもない寿司屋を発見!寿司のピザやドーナツ、マヨネーズやテリヤキソースがベースの変わったソースの寿司など、日本ではありえないとんでもない寿司の数々を提供する寿司屋を、日本の寿司職人がドッキリ指導する!
(同番組の制作会社IVSの公式サイトより)
――というネタを繰り出してみたものの、「寿司で目くじらを立てるなら、日本の中華料理や餃子はどうなる?」「ナポリタンとか和風スパゲッティとか」「インドの人が日本のカレーに文句つけるか?」といったまっとうなツッコミがネット上に溢れた。
勝手に定義した「正しい日本文化」をものさしにして、そこからはずれるものを認めないという偏狭な番組のコンセプトが、現実的には世界中で入り混じりまくる「文化」の現実の姿を知る視聴者から呆れられたわけである。
ともあれ、各番組で「日本人でも知らなかった」というポイントが強調されているように、オーディエンスにとってはまずもって〈身近にある未知のものに触れて知的好奇心が満たされるプログラム〉であるとは言える。
もちろん、テレビの世界では〈身近にある未知のもの〉を紹介するのが知的なエンターテインメントの伝統的な常道ではあるのだが、右に挙げたような番組群にはそこに必ず「だから日本がスゴイ」が接続されているところに特徴がある。
「日本スゴイ」がMCのコメントやテロップで画面に被せられてゆくパターンでは、NHK『驚き!ニッポンの底力』で二〇一三年秋に放映された「大海をゆけ 巨大船誕生物語」が好例だ。