中国製AIディープシークは信用できるのか?

中国製AI「ディープシーク」が世界に与えた衝撃…ではその信用度は? 尖閣諸島問題について英語で聞いてみたら_2
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これは私が主宰するnoteにも書いたことだが、ディープシークに対して中国政府によるバイアスがどの程度かかっているのか、確かめたかった。

ディープシークの話題が世界を席巻するようになってから、AIに対して政治的な質問を投げかける人が増えた。そのなかには、中国政府がご法度としているような話題を尋ねた人もいたようだが、ディープシークは質問に答えていないようだった。

本当だろうか?私もアプリをインストールしてトライしてみた。「こんにちは、私はディープシークです。今日はどのようなご用件でしょうか?」との挨拶が画面に浮き上がってきた。

尖閣諸島問題について英語で聞いたら、最初は英語で応じてきたのだが、数秒後に画面がフリーズした。ややあって、こう持ちかけてきた。「すみません、別の話題について話しましょう」と。その意味では、確かに政治バイアスはかかっていた。

だが、ディープシーク・ショックのポイントは政治バイアス云々といったものではない。ポイントは、AIの開発に米巨大テック企業が主張しているように、何兆円もかけなくても済むという点である。小規模の日本のAIベンチャーにも、ディープシークのような優れたAIを開発できるかもしれないのだから。

インターネットのようにAIを米テック企業の独占状態にさせてはいけない。その意味でディープシークの登場は歓迎すべきことなのだ。繰り返すようだが、ディープシーク・ショックの最大ポイントは、AIの開発に米企業が主張しているように何兆円もかけなくてもいいという点にある。

ディープシーク・ショックが起きた直後、オープンAIに許可を得ないでディープシークが不正にデータを取っているといったニュースが立て続けに流された。

そもそもオープンAIはウェブで著作権がかかっているデータを勝手にスクレイピング(自動収集・加工)して、それを有料で売っている。一方でディープシークはオープンソース・タイプなので、無料で公開している。かえってオープンAI側のあざとさが際立った一件だった。

今回のディープシーク・ショックのインパクトがどこまで及ぶのか。それはもう少し時間が経過してみないと分からない。今、言えることは、AIバフル崩壊のきっかけになり得るということだ。私の感覚的にはそんなところだろうか。

文/エミン・ユルマズ

エブリシング・クラッシュと新秩序
エミン・ユルマズ
エブリシング・クラッシュと新秩序
2025年5月26日発売
1,870円(税込)
四六判/256ページ
ISBN: 978-4-08-786140-2

2025年の4月2日、米国のトランプ大統領が全世界に向けて発表した関税政策は、世界中に衝撃を与え、世界同時株安を招いた。
NYダウやS&P、nasdaqなどの米国の株価の主要指数の暴落は一週間ほど続き、日経平均も一時は500兆円もの時価総額を失うほどの暴落となった。いわゆる「トランプショック」である。

今回の経済危機は、まさにこの本の校了中のできごとであり、日々、情報をアップデートしながら、この本は完成した。
ただ驚くことに著者は、すでにこの本において経済危機が来ることを予測し、4つの兆候について詳しく分析していたのだ。
それは2000年代のITバブル崩壊やリーマン・ショックの際にも表れた、いくつもの経済指標の変化を読み解いた結果だった。

また日々の経済データの分析のみならず、経済の歴史も深く研究している著者は、今回のトランプショックを単なる一時的なものとは捉えず、世界経済や国際政治が大きく変化するパラダイム・シフトと考えており、その理由も本書では明らかに語られている。
中国のみならず、BRICS諸国も台頭する今、私たちは大きな歴史的な転換期に生きているのだ。
米国と中国の新冷戦、それによる経済のディカップリングを早くから予見していた著者は、常に著書やSNSで最新の情報を発表してきた。

本書は、それらを集大成し、世界が変わる重大な局面において発想の転換を促す書でもある。
ますますひどくなる新冷戦によって経済がブロック化し、世界中がより高インフレに悩まされ、インフレ下の不況、すなわちスタグフレーションに陥りかねないことに著者は警鐘を鳴らしている。

こんな先行きが見えない時代に、自分の資産を守るにはどうしたら良いか、歴史を学び長期的な視点を持つことの大切さを説く。
さらにこの新冷戦の中、再び注目を浴びるのが日本であることにも言及し、危機をチャンスととらえるべきことを教えてくれる。
世界が日々、変化する現代に生きる私たちが、経済危機をいかに乗り越え、未来に希望をもつべきか? 多くのヒントを教えてくれる必読の書である。

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