ガソリン値下げの効果と課題
実際、ガソリン1リットルあたり10円引き下げる石破政権の物価高政策は、どのような効果と課題があるのだろうか。環境・エネルギーの専門家である江田健二氏に話を聞いた。
「ガソリン価格は1リットルあたり180円を超える高値ですので、自動車の利用者には5%程度の価格が下がるメリットがあります。ただし、それでも10円ですので、限定的な削減効果であり、『いつかはやめなければ』と言われていたガソリン代への補助金がいつまでも延長され続けるという課題も残ってきます」(江田氏、以下同)
車を日常的に使用する人にとっては、10円の値下げでもありがたいが、車を所有しない人にとってはあまり影響がない今回のガソリン値下げ。多くの国民が求めていた消費減税と比べると、政策として弱いとも感じるが…。
「たしかに都市部の車を持たない若者にとっては、メリットがありません。一方で、地方の車を常に使う生活者にはとても影響があり、そういう方からは支持される政策だと思います。
またネット上では『補助金』よりも減税を求める声が未だに根強いです。今回の値下げのように消費減税よりも速やかに実行することができる反面、『補助金』には一部の企業に中抜きされることへの批判もあり、不透明感も残ります。疑念を払拭するためにもガソリン価格の中身を国民に伝えていく必要があると思います」
実際に、このガソリン値下げに対し、都内で20年以上ガソリンスタンドで勤務する50代の男性はこうぼやく。
「今はガソリン代も本当に高くなって、私が働き始めた20年前はレギュラーで1リットル80~90円、地方だと70円台でしたから。でも、都心の若者はほとんど車なんて持ってないから、値下げされても恩恵ないのかな」(都内ガソリンスタンド勤務スタッフ)
その一方で、今回はガソリン値下げだけでなく、7~9月の夏場の電気・ガス代の高騰に備えた支援政策もおこなうと公表した石破政権。これには車を所有していない多くの国民にとっても恩恵がありそうだが…。
「かなり影響はあります。ただし、これまでの電気、ガスの補助金は利用量が多いほど補助金が増える矛盾があります。今後実施する場合は、一定量までに厚く補助するなど、補助金額を削減しつつ、省エネ行動を促すなどの工夫が大事だと思います」
来月から実施されるガソリン値下げ。果たして、食料品値上げや家賃高騰など加速する物価高対策の一手となるのだろうか。
取材・文/集英社オンライン編集部