高齢男性に目元を殴られ失明しかけた方も…

また、小児科から高齢向け施設など11年の看護師歴のあるYouTuberの看護師マッキーさんも「患者さんからの暴行や暴言は、看護師なら誰もが経験しているはず」と言う。

「妊娠期間中に小児科に勤務していた時、ワクチン接種する子どもが動かないように押さえていたら、手首の上を思い切り噛まれて出血したことがあります。子どもだから仕方ないのですが、やはりそういうアクシデントに見舞われるとショックは大きいです。

それに知り合いの看護師で高齢男性に目元を殴られ失明しかけた方もいました。看護師は自分の身を守るのも仕事のうちなのです」

YouTuberの看護師マッキーさん(本人YouTubeより)
YouTuberの看護師マッキーさん(本人YouTubeより)

そして特に女性患者に多いのが「つねる、引っかく」なのだという。

「術後に起こる意識の混乱や精神障害で、急激に錯乱や妄想、興奮状態を起こしてしまう『術後せん妄』というのがあるのですが、ベッド柵を投げられたり、引っかかれたり、つねられました。今回の広末さんも引っかいたようですが、なぜか女性って看護師の腕をつねったり、引っかいたりする人が多いですね…」

都内の総合病院で働く現役看護師のAさん(40歳)は、実際に患者が異常な行動を起こしたので、通報し、警察に連行される場面に立ち会ったことがある。

「肝臓を悪くして血中アンモニアという数値が高かった60代くらいの男性患者さんがいました。この数値が上がると異常行動をしてしまうことがあり、ナイフをちらつかせてきたんです……。

『危ないから回収させて下さい』と言うと『振り回してないのに取り上げるのか? なんでだ? 振り回すってのはこういうことだろうが』とナイフを振り回したので、これはさすがに通報しました。その患者さんは警察に連行されましたね」

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
写真はイメージです(写真/Shutterstock)

また、器物損壊をする高齢患者もいるようだ。

「80代の男性患者さんが、隣の部屋は空室なのに夜中に『隣がうるさい』と何度も苦情を言ってきたんです。

『誰もいない』と何度も言っているのに『うるさいうるさい』と言い張り、だんだん興奮してきて『俺は昔は空手やってたんだ! お前らなんかこうしてやる』とオーバーベッドテーブルを拳で破壊し、壁にも正拳突きを繰り返して大変でした。

女性看護師ではどうにもならないので、男性の当直医師に対応してもらってなんとか落ち着かせました…」

「看護師へのセクハラは犯罪です」と張り紙をしても…

また、高齢者医療センターに勤める看護師歴20年のBさん(38歳)も「認知症の男性患者は理性を失ってしまうのか、本当にセクハラ被害も多いです」と言う。

「隙あらば胸や陰部を堂々と触ってきます。もう思い出すのも嫌で忘れてしまったけど、とにかく不快になるような卑猥な言葉も平気で言ってくるんです。

『やめましょうね』と言ったって、話が通じない人の方がほとんどだから。院内には『看護師へのセクハラは犯罪です』と張り紙をしています。これはご家族にも示す意味もあるんですが、正直言って効果はないです」

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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前出の看護師マッキーさんは、「患者さんひとりひとりが看護師もプロフェッショナルだという目で見てくれれば、この問題は大きく変わると思う」と言う。

「患者さんにとって看護師は『召使い』や『お手伝いさん』感覚の方が多く、立場的にはかなり下に見られていることはすごく感じます。看護師もれっきとした医療従事者であり、医師とご家族の間に立って、患者さんの代弁者として働きかける重要なポジションでもあるのです。

どうか看護師が我慢しなければいけない現状が少しでも改善されればいいと思っています」

前出の元看護師のインスタグラマー・みつもとさんも言う。

「今回の広末さんの件で、医療従事者への暴力は傷害罪になるんだと、患者さんだけでなくご家族にも分かっていただけるといいなと思います」

看護師は患者にとって最も身近な医療従事者。広末容疑者だけでなく、すべての患者が看護師に手を上げることをやめ、職業的立場や人権を尊重してほしい。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班