古典的な出会い系利用が有利なことも?
彼女たちの話では各棟によって派閥があり、個々で別の手法を用いているそうだ。棟ごとの縄張りでは、他の棟の人間は場を荒らしてはならないという黙約のようなものまで存在する。
《棟別方法》
・1棟(平均年齢28才)……出会い系サイトを利用
・2棟(もっとも若いシンママが多い棟で平均年齢は23才)……FecebookやインスタグラムなどのSNSを利用
・3棟(デリヘルなど無店舗経営の現役風俗嬢を含む30代全般が多い)……紹介、客への直売
・4棟(30代後半から40代が中心。中には50才を超える女性も)……出会い系アプリなど
男たちとの出会いと交渉の方法は違えど、それぞれそれなりに収益をあげているらしい。年齢的には1、2棟の手法が一見有利に見えるが、熟練者が集結した4棟のやり方に押され気味になることもあるそうだ。
妻たちのことを黙認している旦那も
彼女たちの夫はガテン系の仕事をしている者が多く、梅雨の時期になると仕事がなくなりがちだとか。その期間はパチンコでしのぐものの、安定した収入がない状況が続くという。
とはいえ、そんなに公然と売春行為を繰り返して、一緒に生活している夫にはバレないものなのだろうか。
「ウチの夫は黙認してるよ。だってそんなんバレるし、夜も出て行かせてくれへんやん。仕事中は子どもの面倒みてもらわなアカンし」
ユウリはそう言うが、いくら生活に余裕がないからといって、本当に夫が平然と妻に売春をさせるだろうか。
「アタシらが稼げば、自分はセルシオやらクラウン乗れるやん。だから何にも言わへんよ。だって、別の棟と持ち物で負けたくないもん」
なんと、彼女たちは売春をしながら子どもにブランド品を買い与え、夫には国産の高級車などプレゼントするなど、各棟でお互いに見栄を張り合っている節もあるのだとか。
「この間は、『アンタが担当する援交場所が違うやろ!』って抗議に来た40代の4棟のババアが、中古のベンツでスーパーに買い物行ってたし。それでウチも負けてられへんから、Cクラスの新車買うねん。この間も、マユミはケリー買ってたしな」
屈託なく笑うユウリ。かなり特殊な状況だが、その背景には「売春団地」という環境がそうさせているのかもしれない。
「離婚してるバツイチママの間に挟まれてると、自分も旦那と嫌なことがあったときに“別れたらええわ、何とかなるわ”って気になるんよ。オセロってゲームあるやんか。売春も一緒。ウリやってる奥さん2人と仲良くしてると、自分も“遊ぶお金ほしい、ウリやろう”って思って当たり前やねんって、ホンマ」
そうユウリが言ったあと、けたたましく西野カナの着うたが鳴り響いた。親しそうに話す彼女。いつもの常連客らしい。
彼女は最後に「いつもの場所で……愛してるよ」と言って、スワロフスキーがちりばめられたスマホを切った。
取材・文・撮影/丸野裕行 写真/Shutterstock