赤ちゃんのほっぺた、女性の耳…直接噛まれるケースも増加 

こうした感染症だけでなく、過去にはネズミに直接噛まれる被害もあったとのこと。鼠咬症スピリルムやストレプトバチルスを保菌したネズミに噛まれると、発熱・発疹などの症状が出る鼠咬症を引き起こす可能性もあり重篤化するケースもあるという。

「ネズミが侵入するのは飲食店だけではありません。一般家屋に浸入して、台所の食品をかじったり、壁をかじり穴を開ける、天井裏や壁内を走る物音が聞こえる等の被害を引き起こします。

先ほどクマネズミに関しては警戒心が強いと言いましたが、ドブネズミに関しては気性が荒く攻撃的な性格をしていますので、警戒心は強くありませんが、捕まった個体を触ろうとすると噛みつくこともあります。また、飲食店内に入り込んだネズミが配線を噛み切り、店が停電してしまうという被害もありました」

ネズミがコードをかじった跡
ネズミがコードをかじった跡

ネズミの駆除は1日2日で終わるわけでなく、長い時は数ヵ月かかることもあるという。

「ネズミの駆除には毒餌や罠を仕掛けて店内にいるネズミを直接的に駆除するだけでなく、侵入経路を特定し、その穴を塞ぐのも同時並行でやります。

クマネズミに関しては警戒心が強いので罠を仕掛けてもすぐにはひっかからないことが多いです。いつもはそこに無い異物だと思って避けてしまうので引っかからないんです。

店内に住み着くのも1匹だけでなく、家族で住み着くこともあります。駆除を行いつつ、配線、配管の引きこみ口や換気扇周りなど、ネズミが侵入できる穴や隙間を金網などのかじれない金属性のものでふさぎます。

飲食店も営業を止めるわけにもいかないので、閉店後や開店前に作業を行うのですが駆除が終わるまでは気が気じゃないと思います」

ネズミ混入騒動で、3月31日から4月4日まで全店を一時閉店していたすき家(写真/Shutterstock)
ネズミ混入騒動で、3月31日から4月4日まで全店を一時閉店していたすき家(写真/Shutterstock)

建物の構造上、ネズミの侵入を防げないケースもあるという。例えば、駅直結型のビルや、人が入れないようなビルとビルの隙間が狭い場合など、建物にネズミが入ることは防げないという。

「クマネズミは、人差し指が入るほどの穴が空いていて頭さえ入れば、体が柔らかいので侵入できます。そういう意味では普段気がつかない隙間から侵入されることが多く、エサがあるところなら、なんとかエサを得ようと侵入します。

なので、最近は飲食店では終わったあとに出す生ごみをフタつきのゴミ箱に捨てるなど、そもそもネズミが来ないように予防をするところも多いです。一般家庭においても食材を出しっぱなしにしたり、食べかすなどをきちんと掃除することで侵入予防になります」

ネズミが掘った穴(写真/アペックス産業㈱)
ネズミが掘った穴(写真/アペックス産業㈱)
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東京都千代田区ではネズミに関する苦情が急増し、可燃ごみをフタつきの容器に入れるなどの条例化を検討している。ネズミ対策のための条例は異例だが、高齢者が自宅に住み着いたネズミに体をかじられる被害なども出ており、放置しておけない事態となっている。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班