レシピに著作権はあるのか? 最も重要な考え方とは
現在SNS上にはオリジナルレシピや料理などをアップする料理研究家インフルエンサーが多数存在する。しかし、その裏でさまざまなトラブルが起こっているのが現状だ。
先日、とある料理研究家Aが、ドーナツチェーン店「ミスタードーナツ」で販売されているメニュー「汁そば」の再現レシピをSNSにアップしたところ、別の料理研究家Bが「私が考案した再現レシピをパクられた」と投稿し、話題を呼んでいた。
まず、この騒動のポイントになるのは、「料理のレシピに著作権はあるのか」という点だろう。骨董通り法律事務所 for the Arts 代表の弁護士・福井健策氏に話を聞いた。
「結論から言うと、料理のレシピそのものは『この材料をこう調理するとこういう美味しい料理ができる』というアイデアであるため、通常、著作権はありません」
そもそも著作権とは、著作物を創作した者に与えられる、自分が創作した作品を無断で複製・利用されない権利だという。ではどんなものが著作物にあたり、なぜレシピは著作物に該当しないのだろうか。
「著作権を考える上で最も重要なのが、アイデアと表現を区別するということです。我々人間は他人の模倣をして生きており、例えば火の起こし方ひとつとっても先人が生み出したアイデアを真似て生命活動を続けています。
これは生存や文明にとって最も本質的なことで、本来そういった情報は自由流通が原則です。したがって、料理のレシピも同じでアイデアであり、著作権法による独占の範疇外になるわけです」
では、「私が考案した再現レシピをパクられた」と投稿した料理研究家Bが、「著作権法違反で訴える」と料理研究家A相手に裁判を起こした場合、どんな結末を迎えるのだろう。
「個別のケースの裁判結果を予測することはできませんが、料理のレシピは基本的にはアイデアであり、多くの場合は著作権による独占の範疇外と考えるのが妥当です。そのため、公開されたレシピの場合、著作権法での訴訟は一般的には厳しくなります」
いくら「パクられた」と訴えても、著作権法的にその主張が認められる可能性は低いというわけだ。
「ただし、作り方というアイデアを超えて、それを説明する特徴的な文章表現じたいを無断で借りれば、著作権侵害の可能性が高まりますので要注意です」