「学年主任からのいじめを教育委員会や校長に訴えたのですが…」
次の情報提供者は、関西地方の公立中学校で「講師」(教員免許を有してはいるが、教員採用試験に合格していない非正規雇用の先生のこと)として15年間勤めてきた、40代後半女性のU先生だ。
U先生は大学在学中に教員採用試験を受けるも、「今でこそ倍率は過去最低ですが、当時は倍率がものすごく高くて難しかった。私はその採用試験に落ち、再度トライすることなく、講師として勤めてきた」と言う。
「講師といえど、クラスの担任を持つこともあるんですよ。講師は正規教員よりも、もちろん立場は下なんですが、これまで5校以上経験した中でも、嫌な思いは一切してきませんでした。
しかし、現在の中学校の学年主任の先生は、ことあるごとに私をいじめてくるのです」
一体どんないじめなのか。
「昨年の入学式の際に私の礼服を見て『礼服って、どんなのか知ってる?』と嫌味を言い、『私の後ろを歩きなさい』と新人扱いしたのです。
『まああなた、正規(教師)じゃないしね』とみんなの前で言ったり、学生の答案の私の採点にミスがあったことに対し、わざわざ間違った部分に付箋を貼って『この人、こんなに間違ってるの!』と言いふらしたり。
ときには、私のマーカーペンが主任の筆箱に入っていたので『それ、私のです』と言うと『あ、これ? はい』と謝ることなく返してきたこともありました」
また、その学年主任からは職員室内で他の先生がいる前で「そろそろ気づいたら? あなた、みんなから嫌われてるよ」と言われたこともあったという。
日々の些細な嫌味や指摘とはいえ、これを毎日されたら嫌になるのも当然だろう。U先生は県の教育委員会に「学校名や学年主任の先生の実名」を記してメール相談したという。
「学年主任の言動について覚えてる限りのことを列記して訴えました。メールを送ったのは去年の初夏です。夏休みの終わりに校長とも話しました。でも『今回はパワハラに該当しない』と言われてしまいました。
私の経験上、このようなケースは前々任校までさかのぼり、当該教師に不適切行為があったかどうかの調査が行なわれるはずで、それに『該当』する言動もあったようですが、年度途中だからということで本人に対するお咎めもありませんでした」
今年度で退職を決めたU先生の次の就職先は「塾講師」だという。
「やはり子どもの教育には関わっていきたいから塾に勤めます。ただでさえ教員ひとりの作業量が増えている中で、教員同士の足の引っ張り合いや嫌味を言うなどの行為が横行すると、立場の弱い先生や真面目に職務にあたろうとする先生が疲弊します。教員は国の根幹です。その教員の質の低下は何を意味するのでしょうか」
文部科学省の「令和4年度学校教員統計」によれば、公立高等学校の教員離職者は3年前より355人増加。
また離職の理由については、公立中学・高校ともに「病気のため(精神疾患含む)」「転職のため」とする回答がこの10年ほどで増加し続けているという。
果たしてこの中のどれだけの人数が、今回のふたりのようなケースで退職に追い込まれているのか、これ以上の「教員卒業」を食い止める手立てはないのだろうか。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班