自身のキャリアの中でも重要な1戦
フレーチャは小手先で投げるとうまく飛んでいかず、これを投げているうちに自然と身体全体を使った投げ方を身につけられるという目的で開発された。
山本を尊敬する髙橋宏斗(中日)や、同じく矢田トレーナーに師事する北山亘基(日本ハム)など日本代表に名を連ねる面々だけでなく、合理的な身体の使い方を磨きたいとフレーチャにたどり着いたプロ野球選手の姿も球場で目にする。
山本に尊敬の眼差しを向けるのは、日本人選手だけではない。ドミニカ共和国出身で昨年MLBデビューを飾り、30歳になった今年、西武に新加入した右腕投手エマニュエル・ラミレスは山本への憧れを抱いて来日した。
「アメリカにいる頃から、日本のピッチャーは本当に優れていると敬意を持って見ていた。特にいいピッチャーだと思っているのが山本由伸だ。彼のようになりたい。山本のようなフォークを、自分も日本で投げられるようになりたいと思っている」
世界中から多くの目が注がれ、空前の盛り上がりを見せる今回のMLB開幕シリーズ。二刀流や2年連続3度目のMVPで史上最高選手となった大谷が、最大の目玉であるのは間違いない。
ドジャースの強力打線を山本は味方につけるなか、先発で投げ合うのはカブスの今永昇太だ。開幕戦では史上初となる日本人対決。これほどの大舞台は、レギュラーシーズンではなかなか訪れないだろう。
山本のキャリアにとって、どれくらい重要なマウンドになるだろうか。
「本当にたくさんの方に支えていただいて、いろんな助けをしていただいて、ここまで来られています。これまでの野球人生に携わってくれた方もすごく楽しみにしてくださってると思うので。とにかくいろんな方にいい姿を見せられたらなと思っています」
オリックス入団1年目の2017年4月、矢田トレーナーの下を初めて訪れた際、「世界一の投手になる」と目標を口にした。以来、地道な努力を重ねて日本球界で無双し、ドジャースに入団。矢田トレーナーも同じタイミングでドジャースのスタッフとなり、二人三脚で取り組みながら2年目の今季、栄誉ある開幕投手を任されることになった。
メジャー2年目の本領発揮へ。カブス戦では5〜6イニングを投げる予定のなか、どんな2025年の滑り出しを見せるか。
昨季より進化した山本の姿を、多くのファンが楽しみにしている。
取材・文/中島大輔