違憲の証拠が多すぎる 

第1点目は尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領弾劾裁判の行方だ。現在、尹大統領は国会から「非常戒厳発令は違憲・違法」と弾劾訴追されている。

審判にあたる憲法裁判所の判事8名のうち、6名以上が不法性を認定すれば、尹大統領は懲戒罷免、つまりクビとなる。すでに最終弁論も終わり、3月中には弾劾の可否について判決が下る見込みだ。

尹大統領・弾劾審判「8対0の全員一致で罷免」か、それとも「サプライズ棄却」か…国論二分の韓国で「宣告後に起こること」_1
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11回に及ぶ弾劾審判すべてをネット傍聴してきた私自身は、尹大統領は罷免になると予測している。

そう考える理由はいたってシンプルだ。弾劾審では尹大統領の戒厳令発令が違憲だったことを裏付ける証言や映像などが数多く示され、その大部分が証拠として採用されている。軍が国会の窓を打ち破って国会内に侵入する映像はその典型だ。

戒厳令について定めた韓国憲法77条で、戒厳司令部が特別な措置をとることができる範囲は行政と司法だけで、戒厳令の解除権限を持つ国会は除外されている。

その国会を封鎖しようとする軍のシーンがネットなどに生中継され、多くの韓国民が固唾を飲んで見守った。尹大統領の戒厳発令の違憲性をこれほど雄弁に示す証拠もないだろう。

その一方で、尹大統領側は大統領本人も弁護団も「戒厳発令は合憲だった」と主張するのみで、その合憲性を裏付ける証拠を示すことができなかった。それどころか、11回の弁論で尹大統領は自身の罪を「自白」するかのような陳述をしている。

たとえば、最終弁論で尹大統領は「発令は戒厳の形式を借りた国民への訴えであり、啓蒙だった」と陳述した。だが、憲法77条で戒厳令は「戦時・事変またはこれに準ずる非常事態において」のみ発令できるとされている。国民へのアピールも啓蒙も戒厳の要件に該当しない。つまり、尹大統領は戒厳発令が違憲だったことを自ら認めてしまったのだ。

尹大統領は中央選挙管理委員会への軍投入も「自分の指示によるもの」と、やはり「自白」めいた陳述をしている。中央選挙管理委員会は憲法機関として国会と同じく、その独立性を保障されている。そこへの軍投入は国政紊乱にあたり、これまた違憲と判断されても仕方ない。