2024年、THE SECOND王者に。「6分漫才は給水所が必要」

 奥田さんはTHE SECONDに出場している漫才師たちを分析し、流れを研究しながらネタ作りを進める中で、ある“余白”が必要だと気づいた。

「6分間の漫才の中で、ネタが弱くなる瞬間があると感じました。特に選考会では、観客の拍手笑いが起きると『これは落ちたな』と思うことがありました。漫才は勢いが大事で、拍手笑いが起こると流れが途切れてしまうからです。そこで、6分間の漫才には“給水所(休憩ポイント)”のような余白が必要なのではないかと考えました」

勢いを持続させるためには、ネタを余白が多めの寄席向けにしすぎてもよくないし、ハイテンションのまま押し続けるのも難しい。通常であれば、途中で息切れしてしまう。実際に2023年の決勝戦を見て、「勝負のカギは“給水所の作り方”にある」と確信した。

「第1回大会のマシンガンズは、その“給水所”が多く、うまくハマったように思います。一方、予選では囲碁将棋さんのようなテンションもありつつ、余白もある漫才がバランスよくハマっていました。漫才には “余白”が必要なんです。余白があることで、アドリブを入れる余地が生まれる。

ただ、それは単なる即興ではなく、“防衛本能”のようなものなんですよね。『このままだとスベる』と感じたときに、間を取ったり、ツッコミを変えたりして、流れを修正していくんです」

「モグライダーあたりは、ともしげのキャラがいい“給水所”になるのでは」と分析
「モグライダーあたりは、ともしげのキャラがいい“給水所”になるのでは」と分析

とはいえ、余白を作りすぎると、逆に流れが切れて息切れしてしまうこともある。結局、大会で勝てるかどうかは、1年間の積み重ねにかかっている。

奥田さんは、THE SECOND用に仕上げたネタを見て、「これでいける」と確信した。それでもなお、「余白」を意識しながら最後まで調整を重ねた。

「出し惜しみせず、持っているものをすべて出し切る。タイヤだけ持っていくんじゃなくて、ちゃんと走れる状態で挑まなきゃいけないと思ったんです」

ガクテンソクは2024年、決勝でザ・パンチを下し、2代目王者に輝いた。