ラジオ番組で嗚咽しながら謝罪して、世間から消えた男

「経歴詐称発覚から9年という長い時間が過ぎて、“みそぎ”はじゅうぶんに済んだと思うので、どんどん表に出るべきだと思います。しかし、経営コンサルタントを再び名乗るとは……」

こう戸惑っているのは、経歴詐称取材を担当した『週刊文春』の元記者だ。

ショーンK(56歳)が、千葉県の君津商工会議所主催の講演会に登壇することが明らかになり、SNS上が異様な盛り上がりを見せている。「復活まじ?」「オレたちのショーンK」「早く見たい!」と、多くは好意的だ。

もちろん、4月24日に君津市民文化ホール(502席の中ホール)で行われる講演のチケットは、早くも完売した。

ショーンK氏の講演会のイベント情報(かずさFM公式サイトより)
ショーンK氏の講演会のイベント情報(かずさFM公式サイトより)
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ショーンKが「経営コンサルタントのショーン・マクアードル川上」を名乗り、『報道ステーション』(テレビ朝日系)のコメンテーターとして登場したのは2015年3月のこと。

彫が深く、浅黒いハンサム。スーツを着こなし、渋い声で安保法制からAIまで幅広く語る姿は人気となり、翌年の年明けには、ニュース新番組『ユアタイム』(フジテレビ)のメインキャスターへの大抜擢が発表された。

しかし、その放送開始直前に『週刊文春』が経歴詐称疑惑を報じると、ナビゲーターを務めていたラジオ番組で嗚咽しながら謝罪して、ラジオ・テレビなど全番組を降板し、世間から消えた。

担当記者が振り返る。

「彼はニューヨーク生まれのクォーターを自称して、ショーン・マクアードル川上、通称ショーンKを名乗っていました。しかし実際は熊本県生まれの純日本人で、本名は川上紳一郎。テンプル大での学位取得もハーバード大でのMBA取得も、ありとあらゆるものを詐称していました」

卒業はしていないが、ショーンKがオープンキャンパスには行ったことがあるハーバード大学(写真/Shutterstock)
卒業はしていないが、ショーンKがオープンキャンパスには行ったことがあるハーバード大学(写真/Shutterstock)

それでも、今回の講演会のポスターには「ショーン川上氏」と書かれ、講演会を報じるオンラインメディアは、<「ショーンK」ことショーン・マクアードル川上氏>(スポニチアネックス)、<「ショーンK」ことショーン川上氏>(日刊スポーツ)……と、今も芸名に芸名を重ねた呼称が使用された。

呼称はご愛嬌としても、担当記者が戸惑うのは「経営コンサルタント」を再び名乗っていることだ。

君津商工会議所の講演会ポスターには、<経営コンサルタント/専門領域は経営開発、事業再生、新規事業開発>と記載されている。

ショーンKは昨年8月、自身の公式サイトをリニューアルしていた。黒を基調として、その横顔がモノクロのイラストで描かれたスタイリッシュなデザインだ。経歴を記した部分にはこう書かれている。

<金融、製造業、ハイテク、情報通信、産業財、メディアなど大手から中小零細、ベンチャー企業まで約720社(1995~2023年1月末)、日系・外資問わず様々な事業領域における経営・事業課題に対する分析、戦略立案、実行支援業務に従事>

現在の掲載されている経歴(公式HPより)
現在の掲載されている経歴(公式HPより)

担当記者が続ける。

「ショーンKは、日本LCAというコンサルタント会社に在籍していましたが、大卒資格が無いのに雇用されたのは英語が話せたためで、ほぼ通訳の仕事に従事していたと社員が証言しました。

その後、独立したことになっていますが、彼がコンサルタントを行ったと社名を挙げた企業に取材すると、ある大手企業は『プレゼンテーションの司会をお願いしただけ』、ある外資系企業は『お名前を聞いたことがありません』と回答し、コンサルタント実績を探しても見当たりませんでした」