監督やコーチの資質を一発で見抜く一流選手たち

たとえば、イチロー選手やダルビッシュ選手のような自己認識能力の高い選手は、監督やコーチの資質も一発で見抜く。しかし、素直に間違いを認め、勉強しようとする監督やコーチを見限るようなことはしない。むしろ、間違いを認めず自分の考えを押しつける監督やコーチに拒絶反応を示す。意見の違いは、信頼関係の崩壊には結びつかない。

監督やコーチが選手の感覚とは違うことを言ったとき、選手はそれを否定したいと思って何かを言う。その当然の行為を頭ごなしに否定し、自分の考えを主張し、有無を言わさず押しつけてはならない。

「あ、そういうことか」

選手の考えをいったん受け入れ、選手の感覚を理解することに努めるべきだ。そこからさまざまな質問を重ね、選手の反応に対してさらなる質問を積み重ねていけば、選手の考えを軌道修正するタイミングが必ず出てくる。その機を逃さず、ここぞというタイミングで的確なアドバイスを送る。

そのタイミングは、選手がこちらの話を聞く姿勢になっているかどうかによる。そのタイミングであれば、選手もアドバイスを受け入れ、自分のやり方を考える。そのやり取りを何度もできるような関係が理想だ。

当然のことながら、選手がアドバイスを100%受け入れるわけではない。間違っても「俺が言ったことをやっていないじゃないか」と叱責してはならない。重要な狙いは、コーチングを契機に選手が主体的に考え、プラスアルファの成長をしてくれることである。監督やコーチの言うことに服従することではない。

『機嫌のいいチームをつくる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
吉井理人
『機嫌のいいチームをつくる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
2024年7月19日
1,760円(税込)
320ページ
ISBN: 978-4799330739

侍ジャパン前監督・栗山英樹氏推薦!
「実績と学び続ける姿
これほど相反するものはないと思うが、
見事に実行し続ける姿こそ、選手誰もが慕い、敬する要因。
私が絶対的に信用した理由がここに記されているのだ!」
栗山英樹


心理的安全性が一人ひとりの可能性を引き出す
WBCで投手コーチとして侍ジャパンと共闘し、
千葉ロッテマリーンズで監督として就任初年度で前年5位のチームを2位にまで引き上げた
吉井理人監督による「自ら伸びる強い組織=機嫌のいいチーム」の秘訣とは?



「本書では、選手が主体的に「勝手に」成長していくための環境を整え、すべての関係者がチームの勝利に貢献できる心理的安全性の高い「機嫌のいいチーム」をつくることの重要性を説く。そうしたチームこそが「強い」のであり、リーダーにはそのための力量が求められるのである。
就任1年目だった2023年に、監督とは何かを考え、実践し、失敗し、学び、さらに考えるという果てしないループから体得した監督としてのあり方を、とくにビジネスパーソンに向けて伝えたい。プロ野球の世界とビジネスの世界。一見すると違いが大きいようで、組織をまとめるリーダーのあり方については、実は多くの共通点がある。
采配という「意思決定」、コミュニケーションを通じて「心理的安全性」を担保すること、データを駆使しつつ時には「経験と勘」で決断すること......。本書で論じる内容は、きっとマネジメント層やリーダーの指南書としても参考になるはずだ。」(「プロローグ」より)


▼偶然のコミュニケーションを創出する

▼恐怖心より、適度な緊張感

▼理想の監督像は「目立たない」

こんな方におすすめ!
・責任感があり、リーダーとして役目を果たしたいビジネスパーソン
・野球が好きで、強いチームづくりに興味がある人
・教師やコーチなど誰かを教える、教育する立場にある人

<目次>

プロローグ まさかの監督就任
  第1章 監督としての「心得」を定める
選手に主体性を持たせる
恐怖心より適度な緊張感 
キャプテン不在のリーダーシップ
  すべての責任を引き受ける
  勝つことにどん欲になる
  あらゆる情報をオープンにする
  勝利へのプロセスを考え抜く
栗山英樹監督から得た「軸」の置き方
  臆さずに意見を言える環境を整える
第2章 チームの「土台」をつくる
コミュニケーションをチームの土台にする 
全体ミーティングという名の化学反応
  偶然のコミュニケーションを創出する
  話す内容を吟味する 
相手の個性に響くコミュニケーションとは
  ① ベテランとのコミュニケーション 
② 若手や協調性が低い選手とのコミュニケーション
  ③ 専門スタッフとのコミュニケーション 
④ コーチとのコミュニケーション
  ⑤ 不満を抱えている選手とのコミュニケーション
  勝つために必要な「演技」 
① 表情をつくる
  ② 怒る
  ③ 演じる 
④ 伝える
  ⑤ 通達する
  第3章 勝利を狙いつつ「育成」を推進する
勝利と育成は車の両輪
  現場のコーチを生かす
  的確な目標を引き出す「質問」「観察」「代行」
  監督の顔色を見て行動するコーチはいらない
  選手を自立させるコーチであれ
  期待値と実績のギャップを埋める
  コーチを分業制にして能力を際立たせる
  「ひとりで考える時間」を確保する
   第4章 「心理的安全性」を確立しチーム力を高める
勝てる組織に欠かせない「チーム力」とは
  変えるべき文化、残すべき文化
  安心して戦えるチームをつくる
  チーム力を飛躍させる「打ち手」
  チーム力を高めるコミュニケーション術
  ① 個別に呼んで話をする
  ② 雑談 
③ 振り返り
  ④ 選手を鼓舞するミーティング
  ⑤ 全体ミーティング
  第5章 チームを「勝利」に導く
チームが目指す究極のゴールとは
  緻密な戦略・戦術が勝負を分ける
  データと勘を融合させる
  データを読み解き勝利を掴む
  準備に優先順位をつける
  選手の心に火をつける言葉
監督の意思決定とコミュニケーション戦略
  エピローグ 機嫌のいいチームをつくる

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