出来の悪いドラマのワンシーンのように「妻を愛してます 」
弁護人に結婚生活を尋ねられると、「あまりにもケンカがひどくなりすぎて、妻が家を飛び出して別居したこともあります。私が妻を探し出して家に連れ戻したりしていました。詐欺とか犯罪が関わらないときはけっこう優しくしてて、詐欺が関わるときのみ暴力を振るったりしていました。仲直りのときは好きな物を買ってあげたりして仲直りしていました」と説明した。
その後、智華被告とともに、起訴されている被害金約300万円の詐欺事件の弁済関係を進めていることと、智華被告への気持ちを涙ながらに語った。
「妻を愛してるんですけど……。こういうことに関わってしまって…本当に申し訳なく……。ちゃんと真面目に働いてまた妻に認めてもらえるよう頑張りたいです。愛してます。世界一」
この間、こらえきれなくなった智華被告のすすり泣きが法廷に響いた。
出来の悪いドラマのワンシーンのようで、静粛な法廷にもどことなく呆然とした空気が漂う。
その空気を切り裂くように「あなたは被告人のこと愛してますとか言ってますけど、そもそもどういう出会いだったんですか?」と検察官の反対尋問が始まった。
貴聡被告は「バーで働いている時に出会いました」と答え、検察官はその後、結婚した経緯を確認したのち、「結婚して、なぜこんな犯罪を継続してやっていくことになるんですか?」と尋問を行なった。
貴聡被告の説明によると、もともと事業を始めようとして金融公庫にお金を借りようとしたが借りられず、犯行に手を染め広がっていったとのこと。
さらに検察官がクレジットカードを作成した経緯などを尋ねると「全部私です。100%、1000%、120%カードを作っているのは私です」と吐き捨てた。
検察官が一連の詐欺事件で、斎藤夫妻とともに起訴されていた共犯者の野村祐貴被告について「野村さんわかります?」と問うと、「わかりません」と即答し、検察官は苦笑しつつも「共犯者として起訴されていた野村さんはわかりますよね?」と尋ね直した。
そして、貴聡被告は怒ったような口調で「彼とは24時間一緒にいたわけではないのでこのような事実関係や詳しい事情は知らないはずです」と突っぱねていた。
検察官は野村被告や被害者の供述調書から、智華被告が怯えて従っていた様子や状況は一切なかったと告げるが、それに対し貴聡被告は「男性と女性の前で態度がまるっきり変わる人は多いので。私は女性に対して強く当たってしまうタイプなので。私は女性が相手だとついつい手が出るタイプ」と反論した。