“指導者”愛甲猛としても野球界に貢献
――意外と言ったら失礼ですが、愛甲さんは野球界の未来をとても真剣に考えてるんですね。現在は野球とはどのような関わりを?
「TOKYO METS」という社会人クラブチームでコーチをしてるのと、他にも定期的に小学生から大学生まで幅広く野球の指導をしてますよ。以前、俺が教えてた立正中学校は、弱小だったのが3年間で都大会(中体連東京都大会2022)や東日本大会(水戸市長旗東日本少年軟式野球大会2023)で優勝するまでになったしね。
――名指導者じゃないですか。いろいろ面倒な世の中ですが、愛甲さんの厳しい指導でも問題ない?
全然大丈夫。少年野球では親の前で子どものケツ蹴っ飛ばしてるけど、何も言われないよ(笑)。
――それは愛甲さんが怖くて何も言えないんじゃ……(苦笑)。
いや、結局、子どもとも親とも信頼関係を築くためにコミュニケーションが大事ってこと。ケツを蹴るのだって、「期待してるから指導するんだ」って気持ちを伝えてやったら、翌日「また蹴ってください」って向こうからケツを出してきたよ。
――和気あいあいとした光景が浮かびます。
それと「血が出なきゃケガじゃねーよ」って言い続けてたら、それが子どもの中で流行っちゃって。誰かが痛いって言って倒れても、子どもたちは「血が出てないからこれはケガじゃないね」って冗談を言い合ってる。
――昭和的指導が令和の今は逆に新鮮なのかも。
時代が変わったとしても、人間って根本はそんなに変わらないからね。
――そんな愛甲さんが今後やってみたいことを教えてください。
日本版のドライブラインをやりたいとずっと思ってて、その話がいま着々と進んでいるから、それが実現できればって感じかな。
――ドライブライン?
ハイスピードカメラやモーションキャプチャなど最新機器を使って、野球の動作解析や球質の数値化をもとに科学的にトレーニングする世界最高峰の施設のことだね。アメリカにはあるんだけど、日本にはそういった施設がまだないんだよ。
――知りませんでした。
じつは、大学まで野球をやってたある病院の理事長先生が、自分の手でメジャーに行く選手を育てたいと、病院の敷地内にドライブライン的なものをつくろうとしていて、その手伝いをお願いされてるんだよね。
だから、今後はそういうかたちでも野球界のために働ければいいかなと思ってるよ。
――愛甲さんが教えた選手や子どもたちがいつかプロ野球やメジャーで活躍してくれることを期待してます!
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愛甲猛●1962年8月15日生まれ。神奈川県逗子市出身の元プロ野球選手。左投左打。1980年には夏の甲子園でエースとして優勝を果たす。同年ロッテオリオンズに入団、1995年オフに中日ドラゴンズへ無償トレード移籍。2000年に引退後は野球解説者、俳優として活動。現在、YouTubeチャンネル『愛甲猛の野良犬チャンネル』を運営中。
取材・文/武松佑季 撮影/村上庄吾