割安セットメニューの提供に舵を切った本国アメリカ
総務省の家計調査に興味深いデータが出ている。
2024年の二人以上世帯1世帯当たりの「ハンバーガー」年間支出額は6467円だった。2020年は5100円だ。この間に支出額は26.8%増加している。同期間におけるマクドナルドの客単価の増加率は23.7%と、ほぼ一致しているのだ。
単価の大小はあるとしても、他社も同じく値上げをしたことを考えれば、「ハンバーガーチェーンの単価増」と「家計の支出額」は連動している可能性が高い。リモートワークが広がったことでファーストフード店の利用頻度が増えたなどと言われることもあるが、頻度そのものは大して変わっていないことが考えられる。
2月6日にマクドナルドが発表した「3年で100店舗以上の純増」という力強い出店強化で考えられるシナリオは、競合店から顧客を奪いとるという公算が高いのである。
しかしそれは、価格競争というかつての悪夢を招きかねない。
実際、過度な値上げで客離れを起こしているのが本場アメリカのマクドナルドだ。2024年10-12月のアメリカにおける売上高は前年同期間比1.4%減。アナリストの予測を上回る減少率だった。2023年10-12月は4.3%増加していた。
日本と同様にアメリカのマクドナルドでも、高インフレを背景に2022年ごろから価格改定を重ね、高収益体質へと生まれ変わっていた。しかし、現在は消費者の節約志向が高まり、客数が伸び悩んでいる。足元では割安なセットメニューを充実して回復に躍起になっている。
国内で高級路線を維持し、客数の減少に悩まされた会社といえば、セブン&アイ・ホールディングスだ。セブン-イレブンの国内既存店の客数は2024年から前年を下回る月が多くなった。それに合わせ、既存店売上も前年割れを起こしている。
集客対策として2024年9月に導入したのが「うれしい値!宣言」という名の安売りだった。これが功を奏して9月以降は客数が前年を下回った月は一度もない。
マクドナルドの価格は今や高級路線のモスバーガーと大差がなくなっている。マクドナルドの足元の業績は良好かもしれないが、増店による収益の拡大が単純に進むとは考えづらい。慎重な出店計画が必要になるだろう。