「リベンジ退職」する社員は意外にも…

実際にどのような人が「リベンジャー」となりうるのか、エンカウンター社会保険労務士法人の社労士に話を聞いた。

「雇用側の視点からみたら、業務を抱え込んだ状態で突然姿をくらます悪質な愉快犯のように見えるケースでも、労働者側の視点に立つと、会社に対して服する精神が強かった人ほど、その分、働き甲斐や見返りを感じなくなり、『辞めないと分かってもらえない』という意識を持ちやすいのだと思います」(社労士、以下同)

向上心高く仕事に取り組んできた人ほどリベンジャー化するのは、意外にも思えるが……。

「最初は前向きに仕事に取組み、加速度的に評価されていく。ただそれがデフォルトになって基準値が上がった結果、評価は天井に達して止まります。

評価が止まりながらも、できる社員に業務は偏るし、年次を食うごとに払った犠牲と評価、待遇が連動しないと『消費された感』を抱いてしまう。しまいには義理すら消えて『引継ぎなんて知っちゃこっちゃない』『今まで自分の仕事に興味を示さなかった会社が悪い』と退職を助長させます」

と指摘する。さらに雇用側からは“突然”の出来事に見えても、労働者側は「リベンジ退職」までにいくつかのステップを踏んでいるという。

「労働者側は退職まで積もり積もった不満やSOSのシグナルを出してなにかしらのアクションも起こしているはずです。それを雇用側が見過ごしてきて、休職や退職に入る社員を『リベンジ』と呼んでいるにすぎません」

アメリカで急増する「リベンジ退職」(写真/shutterstock)
アメリカで急増する「リベンジ退職」(写真/shutterstock)

リベンジ退職を最小限にするために雇用者側が配慮すべきことはなんなのか。

「労働者側も、これまで尽くしてきた会社なので離れたくない気持ちは持ちつつも、愛情から憎悪に切り替わるのは一つの出来事ではなく、時間とわだかまりの積み重ねの結果なので、そこをどう会社としてキャッチできるかにかかっていると思います。

期待値が大きかった分、失望に変わるときの反動も大きいですから」

リベンジ退職の多発を防ぐためには、雇用主側にも日々の誠実な姿勢が求められている─。

取材・文/集英社オンライン編集部