診断書叩きつけたとき、上司の反応は…
休日は月2日。10連勤という過労が続いた末、「限界であること」を訴えたが、一切真剣に取り合う様子のない上司の姿に堪忍袋の緒が切れた。
すぐさま心療内科に駆け込み、「うつ病」の診断書を片手に、上司の机に叩きつけた。
「こういうことなんで……。もう働けないです」
その一言を言い残し、会社を去ろうとしたHさんを慌てて引き止め、
「今までのことは会社に言わないでくれ」「希望の部署に推薦するから」と懇願した上司。その後、一応の謝罪の言葉をもらったというが、直後の2021年秋に休職に入った。
それから半年後、かなり体調が回復した段階で、「ハラスメントとして上司を正式に処罰してほしい」と証拠書類を持って人事部長のもとに赴いたHさんだったが、「今日は諸事情でハラスメントの受付はできない」と開口一番に言われた。
産業医に2度ハラスメント申請の要望を伝え、ようやくセッティングしてもらった人事部長面談での一言に、Hさんの心はさらに深く傷ついた。
「帰宅して冷静になったとき、『言いくるめられたな…』と絶望しました。僕はハラスメントの申請をしに行ったはずなのに、人事部長に言っても動いてくれないならもう無理だなと……。この会社に期待できることはなにもないと思いました」
さらに追い打ちをかけるようにその直後、本社への異動が命じられたHさん。「変わるべきは上司なのに、なぜ自分が厄介者扱いされるのか、全く納得できませんでした」
〈このたび、人事部長との面談において文書で伝えた内容から受けた心理的苦痛が大きくうつ病を発症し、現在も通院を余儀なくされており、心理的苦痛を軽減するために退職します〉
そう明記した退職届を、退職代行サービスを利用して会社に送り、2022年7月末で退職した。
退職を決めてから体調はみるみるうちに回復。現在は大学で講師として働く傍ら、新聞記者時代に培った取材力を生かし、韓国政治や文化に詳しいフリージャーナリストとしても活躍の幅を広げている。