女優とバラエティ…揺れる気持ち
「こういうことを言うと、『お前があの恋愛をしなきゃよかっただけじゃないか』って、みなさんに思われると思うんですけど、最初はものすごくいい環境でスタートさせてもらったのに、私は自分のキャリアを曲げてしまうんですよ。
そうすると、いただける役も狭くなるわけですよ。そして、先細りを感じて、『女優さんとしては無理かもしれない』と思ってバラエティ番組に出始めるんです。
でも、やっぱり『一流の女優になりたいから、バラエティは出ない』と言ったり、でも、バラエティに出ているほうがキャスティングされる率が高いと思って、またバラエティをやらしてもらったり…。
じっとしていればいいのに、そんなふうにその時期、その時期で方向性を変えてしまったんです。そして、そのたびに転ぶんですよ、派手にね(笑)」
一般的な視聴者の目線では、コンスタントにドラマや映画に出演し、また『ウッチャンウリウリ!ナンチャンナリナリ!!』(日本テレビ系)や『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)などで存在感を示してきたように見える。
だが、本人にとっては「悔いの塊だった」。
「『あのとき、あの人の言うことを聞いてればよかった』『あのとき、そっちをなんで選んだの』『あのとき、なんで誰かに相談しなかったの』っていうのがずっとあるんですよ。
アスリートは0.01秒縮めるために、自分を何度も見てフォームを改善したり、新しい練習方法を取り入れたりするじゃないですか。
私も陸上をやってたからかそういう精神構造なので、ずっと自分にダメ出しするんです。今もしてるんです。
選んでしまったのは自分なので、それについてなにか言われたときは、『ほんとに大変申し訳ございませんでした』って言うしかない。
でも、自分のなかでは常に後悔や懺悔があって、パラレルワールドじゃないですけど、なぜこっちを選ばなかったのって思ったりするわけなんです」
そんな国生の救いとなったのは、執筆だった。全世界がコロナ禍に見舞われた2020年から、彼女は小説『国守の愛』を書き始め、小説投稿サイト「小説家になろう」に投稿を始めた。
「私は、プライベートで自分のキャリアを傷つけたっていう、すごい後悔があって。そこが申し訳ないと思ったんですよ、タレントとしての国生さゆりに対して。
でも言い訳をさせてもらうと、いろんな経験をしたからこそ小説を書くことができたと感じるんです。『私の人生の中で必要なことだったんだね』って、思えるようになったというか。
なんかね、やっと自分の人生が楽しいもんだったんだなって思えるようになりました」
これまでの経験や感情、そして反省を、自身の言葉で語る国生。後編では、そんな彼女にとって、大きな軸となった執筆への思いと、そこから得たものを聞く。
#2へつづく
取材・文/羽田健治