仏教のいい話、説法をネタに取り入れる
――彼岸田さんのファンのコメントを読んでいると、お笑い要素に加えて真面目な説法を期待しているファンも多いなと感じます。いわゆる「お坊さんのいい話」とお笑いを融合させることは難しいのでは?
説法も取り入れたほうがよいと考えるようになったのには、いくつかのきっかけがありました。
そのひとつが三遊亭円楽師匠とご一緒させていただいた巡業です。落語家さんは時節や地域の話を織り交ぜながら、会話に深みのある芸が特徴。お客さんも笑いだけでなく、もっと深い満足感を得ているように見えました。そこで、自分たちなりに芸のレベルをさらに高めるために仏教の説法を取り入れようと決意しました。
同じ宗派の先輩からのアドバイスも後押しになりましたね。「説法にボケを入れること自体珍しいから、ボケを抑えめにして最後に真面目な話をズドンと入れたら、あなたたちを超える人はいません」と言ってもらえたことがあるんですよ。
実際にお寺からの依頼で、「命と供養」というテーマで1時間の漫才をしたときに、前半はお笑いのネタを披露し、後半は真面目な話をするのですが、最後まで熱心に耳を傾けてくれるんですよね。これは、私が芸人であると同時にお坊さんでもあり、ありがたい話ができるという期待があったからだと思います。
説法を取り入れ始めてから、仏教に興味がなかったお客様からも「仏教の難しい言葉の意味がわかるようになりました」といった感想をいただくようになりました。今では芸人として認められるためにも、お坊さんとしての実力を磨いていかなければと考えています。
――今後、個人的に実現したいことはありますか。
現在、各地のお寺でライブをする全国行脚のような活動をしているのですが、いつかは自分の大本山でライブを開催したいと考えています。視聴者の方々が喜んでくださるのはとてもうれしいのですが、曹洞宗の大本山がよく思っていないのではないかという懸念がずっと心の中にあって(笑)。
やっぱり、できるだけ多くの人に喜ばれるような活動をしたいので、いつか大本山から「あなたたちがやっていることは、素晴らしいことですよ」と認めていただきたいという思いがあります。
目標の実現に近づくためにも、まずは2025年8月30日に横浜関内ホール小にて開催される、THE 南無ズのワンマンLIVEを成功させたいですね。
取材・文/福永洋一