読むお経は場面に合わせて変えている

――お坊さんが「即読経」のようなエンタメ企画をやっても仏教界的には問題ないのですか?

明確な決まりはなく、個人の判断に委ねられています。私自身はいくつかの線引きをしていて、たとえば下ネタは避けるようにしています。絶対にダメというわけではありませんが、お坊さんとして不適切だと感じることは控えているんです。

ただし、各宗派の基本的な作法から外れることは、問題視されやすい傾向にあります。「その宗派では木魚を使用しないはずなのに叩いている」や「曹洞宗のお坊さんなのに頭を剃っていないのはおかしい」といった感じで。そのあたりには注意を払う必要がありますね。

――エンタメ企画中に、お経を読むのは不適切ではないのですか?

宗派によっては、読むのが適切ではないお経もあります。それ以外の点に関しては、明確な基準はありませんが、できるだけ物議を醸さないよう心がけています。とくに、お通夜などで読まれる死と近い場面のお経は、不快感を覚える方もいらっしゃるため、使用はしていません。

一方で、写経やデザインとして広く普及し、文化としても定着しているお経については、比較的問題が少ないので読んでもよいかなと。

即読経の企画では基本的に「舎利礼文(しゃりらいもん)」というお経を読んでいます。読誦(どくしょう)しても支障が少なそうなものから、皆さんにとって耳新しく新鮮な印象を与えられるお経として選んでいます。

実は、お経は状況に応じて使い分けることもあるんです。「呪怨」の企画で「公衆電話は最近見ないので供養したほうがいいんじゃないですか?」という展開になった際、流れ的に手短にお経を読んだほうがよさそうな場面だったので、「延命十句観音経(えんめいじっくかんのんぎょう)」という短時間で読めるお経を選びました。

長いお経を途中で切り上げる形でもいいのではないかと思われるかもしれませんが、お経は最後まで読み通してこそ意味があるという考えに配慮しています。

THE 南無ズのメンバー:左から虚無弦 僧四さん(ベース)、彼岸田 盆さん(歌)、おがみ おがさん(ドラム)、涅槃崎 悟さん(ギター・歌)
THE 南無ズのメンバー:左から虚無弦 僧四さん(ベース)、彼岸田 盆さん(歌)、おがみ おがさん(ドラム)、涅槃崎 悟さん(ギター・歌)

――仏教をネタにするということでデリケートな判断が要求されるのですね。

セーフティラインについては、なるべく自分一人の判断に頼らず、宗派の公式広報も担当するお坊さんにも助言をいただいています。