「子どものために私が我慢すれば…」では子どもは守れない
万が一、夫からの性行為の強要に悩んでいることを告白された場合、どうすればよいのか。
「殴られたり、首を絞められたりするなど命に関わる場合は、警察庁の性犯罪被害相談#8103や全国共通のDV相談ナビ#8008に電話をするか、都道府県に設けられている配偶者暴力相談支援センターに相談をするよう促してください。
ただ、ここに連絡をするのはハードルが高い上に、二次被害の声も届いています。勇気を出して相談したにも関わらず『その程度ではDVと言えない』と、突っぱねられてしまうことがあります。そこで、積極的に利用してほしいのが“民間シェルター”です」
民間シェルターは一部のDV被害者から“命の駆け込み寺”として知られている。NPOや地域の弁護士会などが運営しており、臨機応変に対応してくれる。公的シェルターもあるが、入居審査が厳しい上に、入居期間の制限があることがほとんどだ。
「民間シェルターであれば相談者に寄り添い、現状の打開策を一緒に考え、力になってくれるはずです。まずは、その存在を知らせてあげるだけでも、解決の糸口になるかもしれない」
種部氏は多産DVを受けていることがわかったら、女性に必ず伝えている言葉がある。
「『あなたは悪くない』と伝えます。多産DVを受けている女性は、たいてい言葉の暴力を日常的に受けており、自己肯定感がすごく低い。
自己肯定感を上げ、『DVをする男性から離れても生きていける』という前向きな気持ちに一新することを大切に、長い時間をかけて彼女たちの話を聞くようにしています」
そして、会話の中でよく言われる「子どものために私が我慢すれば…」という言葉に、疑問を呈する。
「夫婦間の暴力、暴言を見て育った子どもたちは成長を重ねるにつれ、特に思春期の頃に問題を抱えることが多いです。『子どもが不登校で』という悩みから、夫婦関係を問うと、『実は夫に暴力をふるわれており、性的なDVもある』と多産DVが発覚したこともあります。
私は、多産DV含む夫婦間でのDVが日常的に行われてきた家庭の子どもにも多数触れてきました。
すべてがDVを見聞きしたことに起因しているとは限りませんが、大声に怯えて育ち、大きな声が苦手だったり、ビクビクしていたり、そういった子どももいました」
自分を守るため、そして子どもを守るために。多産DVに気づき行動できる大人でありたい。
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取材・文/山田千穂