2011年にフジテレビを襲った異常事態とは?

一方、SNS上ではフジテレビに対して放送免許の取り消しを求める声も出ている。

しかし、今回の一件で総務省が行政処分するとは考えづらい。これは総務省の元幹部がフジテレビの取締役を務めることによる天下りうんぬんの話ではなく、国民の知る権利に応える放送事業者を国家権力で処分することには慎重であるべきだからだ。

外資出資比率違反など、法に抵触することが明らかとならない限り、行政処分に至ることはないだろう。

ただし、最悪のシナリオがある。それが、視聴者の信頼が長期間にわたって回復せず、視聴率の低迷で収益性を失うことだ。テレビはしきりに視聴率の話を持ち出すが、テレビ局の放送収入と視聴率には密接な関係がある。

フジテレビの2023年度平均世帯視聴率(全日)は4.4%だった。日本テレビが6.1%、テレビ朝日が6.3%だ。同期間におけるフジテレビの放送収入は1473億円、日本テレビ放送網が2261億円、テレビ朝日が1668億円だ。

2022年度までは日本テレビが視聴率でトップを走っていたが、2023年度以降ではテレビ朝日が追い抜いている。今はちょうど過渡期であり、テレビ朝日が収入面で優位に立つ未来もあり得るだろう。

フジテレビは2009年3月期の放送収入が2687億円だった。この年までは視聴率のトップをひた走っており、他局の追随を許さなかった。異変が起きたのが2010年度である。日本テレビに抜かれ、ここからジリジリと数字を落とすことになった。

※テレビ朝日決算説明資料より筆者作成
https://www.tv-asahihd.co.jp/ir_setex/
※テレビ朝日決算説明資料より筆者作成
https://www.tv-asahihd.co.jp/ir_setex/

特に2012年度の落ち込みはひどく、前年の8.0%から7.1%に低下している。

その境目に起こった出来事といえば、フジテレビの偏向放送を主張する抗議デモだ。