世界随一の教育国家、中国

話を戻しましょう。ただ、科挙制度には弊害もありました。科挙制度の確立により、中国は世界随一の教育国家となりました。これはとても良いことです。

ですが、科挙に合格さえしてしまえば誰でも人生逆転できるということで、当時の中国教育は科挙合格のためのものになり、試験科目である儒学以外の学問が軽視されるようになってしまったのです。本来国を良くするための選抜制度であったはずが、「科挙合格」が自己目的化してしまうという皮肉な結果を招きました。

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6世紀に誕生したときには世界でも類を見ないほど画期的だった科挙制度ですが、20世紀に入り欧米が近代化していく中で、少しずつ時代遅れなものだとみなされるようになります。

アヘン戦争や日清戦争での敗北を経験した中国は、古い体制を打ち破る必要性に迫られます。そして1905年、とうとう西太后によって約1300年の歴史に幕が閉じられることになります。

良い面も悪い面もあった科挙制度。最終的には廃止されてしまいましたが、1300年以上も続いたシステムだと考えると、合理的でうまく機能していた面もあったのだと思います。
何はともあれ、こちらのシステムの影響が、今の日本の大学入試や公務員試験などに色濃く残っているわけです。

文/じゅそうけん

『受験天才列伝ーー日本の受験はどこから来てどこへ行くのか』 (講談社)
じゅそうけん
『受験天才列伝ーー日本の受験はどこから来てどこへ行くのか』 (講談社)
2024年12月18日
1,595円(税込)
208ページ
ISBN: 978-4065360309

「受験」でこそ輝く知性、それが「受験天才」だ!

「ペーパーテスト一発勝負」という閉じた世界で頭角を現す「受験天才」たち。幼少期から天才性を発揮するかと思えば、学歴を過度に誇り、なかには学歴で他者を判断することを厭わない者もいた。彼らの一癖も二癖もある破天荒な生態に迫り、新しい受験史を描くのが本書である。受験天才はどのような意味で「制度の落とし子」なのか、明治のはじまりから辿り直し、少子化が進む令和の受験の最前線までをキャッチアップ! 過熱するとも冷却するとも、あるいはエンタメ化・スポーツ化するとも言われる「日本の受験」は、これからどこへ向かうのか。そして日本人にとって受験とは何か。新進気鋭の受験評論家、渾身の書き下ろし。

*本書目次
はじめに

特別巻頭インタビュー 「学歴の暴力」xじゅそうけん
学歴最強、だけど学歴に縛られない! 現在進行形の「受験天才」アイドルはいま何を考えているか!?

第一章 日本初の受験天才は誰なのか(戦前の受験天才)
第二章 受験天才は日本の発展を支えたか(戦後の受験天才)
第三章 変わる教育と変わらない受験天才たち

特別鼎談 宇佐美典也x西岡壱誠xじゅそうけん
『受験はワンダーランドなのか、ディストピアなのか』

おわりに

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