2024年の累計は56789発

何回目かのローテンションののち、ドM軍のひとりが片膝をついた。会場が唸るようにどよめいた。ドM軍は難攻不落ゆえ、これまで苦痛に歪む顔さえ見せない。うずくまったのは、のぞむ氏。30代独身男性だ。

かがむような態勢から立ち上がってファイティングポーズを取ると、会場は再びどよめいた。その後、一切手加減ない攻撃にさらされ、マットに沈んだ。イベントが終わると、清々しい表情で「倒れはしたけど、最後まで参加できてよかった」と語った。

強烈な金蹴りに悶える、のぞむ氏
強烈な金蹴りに悶える、のぞむ氏

のぞむ氏の「蹴られたい願望」は唐突に訪れたのだという。

「中学生くらいのとき、本当に急に『女性に蹴られたい』と思ったんです」

その後、M性感の風俗店などで金蹴りのオプションをオーダーしてその快感に目覚めた。

「最初は緊張しながらだったのですが、自分が想像していた通りの痛みや快感があって、その魅力にハマっていきました」

東海地区最強と呼び声の高い金蹴られ戦士も参加していた。つっちー氏、40代だ。現在は「平凡な会社員です」という彼は、“修行僧”のような細身の風貌をしている。だが、その容姿からは想像できないほどタフな睾丸を持つ。1回、2回と蹴りを繰り出す女性のほうが疲弊していく。

その類まれな睾丸を武器に、今大会の優勝をもぎ取った。彼が性癖に目覚めたきっかけはなんだったのか。

「小学生の頃、女子が男子に電気あんまを食らわせていたのを目撃したんですよ。私にもやってほしいなと思ったんです」

初めての金蹴られ経験は20歳を超えたとき、当時交際していた女性からだった。

「痛みは感じましたが、そこまで悶え苦しむ感じではなかったですね。現在も、もちろん痛みがないことはないのですが、蹴られる喜びの方が大きいです」

だが、そんなつっちー氏も、周囲に身バレすることを警戒した時期はあるという。

「活動してしばらくは、地元のイベントには参加できませんでした。あるときから『なんも悪いことをしているわけではないし、バレたら仕方ないか』と思って地元での活動を始めました。ただ、積極的に自分から告白することは今でもありません」

優勝トロフィーを手にする、つっちー氏
優勝トロフィーを手にする、つっちー氏

 つっちー氏は金蹴りをされるとき、カウンターを手にしている。蹴られた回数を数えているのだ。2024年の累計は56789発だったという。金蹴りの醍醐味とはなにか。

「本能的な喜びでしょうか。他人を蹴る女性の姿が美しいと感じますね。また、こうしたイベントに参加することで日常をリフレッシュできるのもいいですよね。自分の心身の調子をはかる物差しになっていると思います」