退職代行サービスを利用した人の本音
依頼数が増えるタイミングとしては、連休明け以外のほかに、月初、ボーナスの支給後など、一つの区切りになるタイミングが多いのだという。
ちなみに今年の仕事始めは、東京で40日ぶりのまとまった雨が降るなど、天気もあまりよくなかった。こういった要因も、依頼数には関係しているのだろうか。
「天気についてはあまり気にしたことはありませんでした。ただ電車が止まりやすいときは、依頼が増えやすいときという体感はありますね」
1月6日は、SNSのトレンドワードに「仕事始め」「仕事無理」「満員電車」「遅延」「遅刻確定」などネガティブなワードがずらりと並び、憂鬱な日常のスタートをこれでもかというほどにあらわしていた。
実際に、このタイミングで退職した人はどんな人なのだろうか。昨年、年明け早々に退職代行サービスを利用して退職した、都内在住20代の男性・松木さん(仮名)に話を聞いた。
「私は新卒で入った映像制作会社で5年ほど勤務していましたが、最後には退職代行を利用しました。よく言われているような上司が怖いとかそういう理由じゃなく、逆に周りの人が優しくていい人が多かったので、面と向かってやめると言いづらかった感じです」(松木さん、以下同)
松木さんの年収は約340万円。年間休日数は110日ほどで、終電での帰宅、土日出勤することも多かったという。
「業界的には割と普通のほうだったのですが、体力的にしんどく、何度か退職の申し出をしました。しかしその都度、少し改善してくれて引き止められるので、ずるずると続いてしまいました。先輩も相談に乗ってくれるし、会社の愚痴を言いながら飲み会をするのもそこそこ楽しかった。これでいいや……とすっかりその環境に慣れていました」
ところが2023年の年末、帰省して家族や友人と話してから、一気に心変わりしたという。周りから「どう考えてもブラック」「やめるほうがいい」と指摘されたのだ。
「確かに先輩はいい年してほとんどが独身で、休日はゲームするかアニメ見るかで自宅に引きこもっている。自分が数年後、あれと同じになるのかと思うと、無性に怖くなりました。その年末年始の休みにほかの人と話して洗脳が解けたというか、もう1秒たりともあの空間に行きたくないと思い、退職代行サービスを利用することに決めました」