既存の政治エリートによる圧力

「反エリート主義型ポピュリズムにはテンプレートがあります。もちろんそれぞれの国や地域で特有の“文脈”もあり、主張自体はまったく異なります。しかし、ポピュリズム的アプローチで既存政党に反発を覚える有権者の心をつかむ、という点においては非常に似通っている。

誤解を恐れず言うと、日本で言えば大阪維新の会の手法はAfDっぽい。そもそも大阪維新の会の台頭は、中央(東京)に対する地方の反発や、既存政治システムへの批判的態度と密接に関連しています。

ストレートに申しますと、大阪の有権者の中で、中央(≒東京)の支配階級層に対する反骨心…というより嫌悪に近い感情があると思っています。維新は、そんな大阪のローカルアイデンティティをテコに支持を集めている。その構造そのものは、ドイツ東部におけるAfD躍進を支えたそれとほぼ同じなんですよね」

この秋、兵庫県知事選で繰り広げられた“お祭り騒ぎ”もまた、同じ構造で捉えられるとモーリー氏。

斎藤知事 写真/集英社オンラインニュース班
斎藤知事 写真/集英社オンラインニュース班

同選挙は、前知事でもあった斎藤元彦氏がパワハラ疑惑などで不信任を受けて失職、再選を目指す形で行われたが、「既存の政治エリートによる圧力」として斎藤氏自身がこの問題を利用した側面がある。

斎藤陣営は「孤立無援」を強調しつつ、既存の政治体制に対する反発を前面に打ち出した。さらに支持者たちがマスメディアによる報道を『偏向的で不公平』と批判することで、有権者の間に『自分たちの声が正当に扱われていない』という感情を醸成し、連帯感を作り上げていった。

「もちろん斎藤氏に対するパワハラ疑惑を過剰に取り上げるなど、マスメディアの報道姿勢に問題がなかったわけではないでしょうが、マスメディアを巨悪化することで、『既存秩序を壊してやろう』という陣営側と有権者側の感情が見事に重なりました。

ネットやSNSを通じて拡散された斎藤陣営、ないしは斎藤氏を応援するアカウントの発信では、『斎藤さんは既得権益層に改革を阻まれた被害者だ』という前提に立ち、(新聞やテレビが報じない)センセーショナルな話題に踏み込み、『真実を暴く』というポーズを取った。“真実”を暴くためであれば、ルールを逸脱することや、お行儀悪く他者を罵ることすら許容されました」

洋の東西を問わず、反支配階級層運動において「行儀の悪さ」は許容され、むしろカリスマ性の一部として機能する傾向がある。

最大のスターはアメリカのドナルド・トランプ次期大統領であり、また彼を支える閣僚候補たちもその発言内容や行動は過激だ。