「中山美穂、303」に世の女性は魅せられた

もともと中山美穂さんは、同性からの人気が高い女性アイドルだった。

デビューが早く、ティーンを描いたドラマに出ていたというのもあるが、1987年の主演ドラマ「ママはアイドル!」(主題歌『「派手!!!」』)では、ドラマの中で「アイドルの中山美穂」を演じ、その作中での愛称ミポリンが実際の愛称としても定着するほどの大ヒットとなったのも、ひとつのきっかけだろう。

アイドルに憧れる小中学生の女の子たちはこぞって「ミポリン」に夢を見て、このころから中山美穂さんのコンサートには女性客が増えていったという。


9枚目のシングル『派手!!!』(1987年3月18日/キングレコード)
「ママはアイドル」の主題歌で、カップリング曲「ジェラシー」も同ドラマの挿入歌として使用された。10代のミポリンのアイドルぶりが全開のナンバー

9枚目のシングル『派手!!!』(1987年3月18日/キングレコード)
「ママはアイドル」の主題歌で、カップリング曲「ジェラシー」も同ドラマの挿入歌として使用された。10代のミポリンのアイドルぶりが全開のナンバー

中山美穂さんが女性ファンを魅了する要素のひとつに圧倒的な顔立ちの美しさ、というのはもちろんある。
けれど1990年代に入ってからの中山美穂さんのOL人気というのはちょっとすさまじいものがあった。

当時の人気ぶりが伝わるエピソードが、化粧品ブランド、コーセーの口紅のキャラクターモデルを務めたときのものだ。
1997年に誕生したドゥ・セーズ フリーディスのコピーはこうだ。

「中山美穂、303」

当時のポスターを見ると、シックなベージュの口紅をまとったとびきり美しい中山美穂さんの右下にデカデカと「303」と書かれている。「中山美穂、」より全然大きく記されている。もっというなら、商品名はとても小さい。

これを受けてコーセーの化粧品売り場には「303、ください」というOLたちが殺到したのだという。
当時、1本3000円もする口紅をろくにお試しもせず、番号で指名買い。
あとにもさきにもこの「303」ほどのPR効果を私は知らない。
なにしろ、今でも番号が記憶に残っているくらいだ。それも「中山美穂、」とセットで。
そのくらい、インパクトのある中山美穂効果だった。

ちなみにこのベージュトーンの口紅「303」はなかなかにスタイリッシュな大人ベージュで、決して一般受けするようなピンクやコーラルではない。
だからこそ、「中山美穂になりたい」「中山美穂が好き」な女性たちに「なれるかも」と思わせたのかもしれない。

こうしたCMでの、きれいなのに少し茶目っ気がある等身大の「中山美穂」に女性たちは好感をもち、ドラマで恋や仕事に悩む役柄には自分たちを重ねた。

1996年にはこちらも世の女性たちのハートをつかんでいたシンガーソングライターの岡本真夜とコラボレーションした「中山美穂 with MAYO」名義で『未来へのプレゼント』をリリース
1996年にはこちらも世の女性たちのハートをつかんでいたシンガーソングライターの岡本真夜とコラボレーションした「中山美穂 with MAYO」名義で『未来へのプレゼント』をリリース

ちなみにこのドゥ・セーズのラインはその後も中山美穂さんを起用し続け、

「454は美人の番号」
「ある日、ラブラスを使ったら中山美穂になってしまった」
「キレイによく効く女優色」

といった名コピーとともに口紅の品番を前面に押し出し、いずれもヒットアイテムとなった。