2年前から繰り返された戦線離脱 

先述のように、前年は116試合に出場し、打率.288で4年ぶりに2ケタ本塁打を放ったのに、2024年は打率.225、4本塁打で前半戦を終えた。しかも勝負強さと粘り強さを示す得点圏打率は前年.258だったのが、今季はチャンスの凡退も多く、前半戦で.164だった。

なかでも出場数は6月が12試合、7月は9試合と夏場に向かって激減し、打率も5月の.286から6月は.159、7月は.167と急降下した。岡本と並ぶ得点源で、巨人で年俸6億円の坂本がこれでは、阿部が前半戦で「打てない、点が入らない」とぼやいたのも当然だった。

坂本がケガや体調不良以外で登録抹消されて二軍調整したのは、ルーキーイヤーの2007年以来17年ぶりだという。

私も坂本に何度も警告してきた。2022年の著書でも、「坂本勇人の相次ぐ故障は練習不足と体力減退が原因」と書いた。

私の坂本に対する評価が厳しいのは、遊撃手として基本ができていないからだ。
「打球が来る前にしっかり準備ができているかどうか」を見ればわかる。
(中略)
人間は楽をすれば手を抜いて限りなく楽をし、逆に厳しい環境ではそれに対応できる人間になれる。
坂本も捕れる球は一生懸命捕るが、捕れないと思ったら追いかける格好だけでヒットにするから記録上のエラーは少ない。なぜ簡単にあきらめず、球際まで追いかけて正面で捕る努力をしないのか。そうすれば守備範囲はもっと広くなる。逆に手を抜いて三遊間を逆シングルで楽にさばく習慣がつけば、知らない間に守備範囲は狭くなる。
(中略)
私が坂本に厳しいのは、もっとうまくなって球史に残る名ショートになってほしいからだ。彼には、それだけの素質と可能性がある。

(『巨人が勝てない7つの理由』幻冬舎)

 ケガによる戦線離脱もいまに始まったことではない。2022年、プロ入り16年目を迎えて34歳になった坂本はケガが相次ぎ、前半戦だけで3度戦列を離脱した。左内腹斜筋損傷で入団1年目以来の開幕二軍スタートとなった坂本は、4月の阪神戦で二遊間のゴロを追って右ひざ内側側副靱帯損傷で40日間離脱。戦列復帰から1か月後の7月には腰痛で戦列を離れ、ファン投票で遊撃手1位だったオールスター戦も仙腸関節炎で辞退した。

結局、巨人が5連敗で5位まで転落した同年7月の坂本は5試合に出場。オールスター戦までの前半戦は全96試合のうち49試合に出場しただけだった。

その前年までほとんど100試合以上に出場していた坂本の出場試合は83試合に終わり、巨人は2017年以来5年ぶりの4位、Bクラスになって原巨人の沈没が始まった。

そして阿部新監督で4年ぶりのリーグ優勝を勝ち取った2024年も、109試合に出場して打率.238、7本塁打、34打点に終わった。打率は入団以来最低で、打点も一軍の試合に出るようになった2年目以降では2022年の33に次いでワースト2。月別打率は8月.265、9月.250と回復傾向を見せたが、かつてはチャンスに一発で試合を決めた勝負強さは影をひそめ、得点圏打率も.212に終わった。

もちろん巨人の低迷は坂本だけの責任ではない。だが私に言わせれば、坂本の相次ぐ負傷欠場は、キャンプ以来の練習不足と加齢による体力の減退が原因だった。

写真/shutterstock
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