リアルな支援の場に来られない子の居場所に

岡村さんがゆるクラを設立した動機のひとつに、近しい知人が学校に行けなくなってしまった経験があるという。支援に携わりたいという思いから、広告会社に勤務しながら、2020年頃に不登校支援団体のプロボノ(仕事のスキルや経験を活かして社会貢献のために活動するボランティア)メンバーとしてボランティア活動を開始した。

多くの不登校支援団体と関わるなかで、支援を提供している場所に来られない子どもがいることを知った。

「不登校支援をしている人たちは熱量があって、つながりさえすれば全身全霊で対応してくれる人たちが多いです。ただその現場に行くことができない子どもたちもいるんです。家から出られないために、そういう人たちとの接点が失われてしまうのは、もったいないという感覚がありました」

不登校の子どもたちが気軽に繋がれる場を模索するなか、ヒントになったのは引きこもりがちな知人がゲームをしている姿だという。

「ゲームをあまりしない私にとって、自宅にいながらオンラインでコミュニティが形成され、人間関係が構築されていく様子は非常に興味深いものでした。ゲームを通じて仲間との関係が徐々に充実していく様子を見て、オンラインゲームに可能性を見出しました」

マインクラフトの画面
マインクラフトの画面

その後、オフラインでマイクラによる支援活動を行っている団体の知人に協力を仰ぎ、「ゆるクラ」を設立。「マインクラフト」を介してオンラインのみでつながるという支援のカタチは、業界的には珍しく、手探り状態での取り組みだった。

報酬が出ない状況での活動だったが、NPO法人、マイクラサークルの学生、YouTuberなど、各分野の協力者がアイデアに共感して集まったそうだ。

それぞれが本業や学業と並行して支援活動を行い、岡村さん自身も広告会社に勤務しながら活動した。立ち上げ当初は、休日や仕事後の時間を使い、深夜まで準備に没頭することも珍しくなかったという。