盟友・安達了一の存在
楽しいと思って始めた野球が、徐々に苦しいものになってくる。若くして本塁打王のタイトルを獲得し、ブレイクが早かった岡田にとっては、過去の自分を乗り越えなければならないというプレッシャーもあったのだろう。
「とにかくしんどかったですね。22歳で本塁打王を取ってから、しんどい期間のほうが長かったです。一気にもうポンと行っちゃった感じですから。みんなも「もっともっと」って求めますし、自分もそうなりたいと思ってやってましたし。 徐々に徐々に(上がっていく)っていう感じではなかった。周囲が求める結果とのギャップにはずっと苦労してきたかもしれないです」
野球がしんどい、苦しいと感じる中で、でもその気持ちを共有できた友がいた。奇しくも今年引退を決めたチームメイトの安達了一。同い年の安達について聞くと、初めて岡田は少し声をつまらせる。
「僕が引退するって決めて、発表される前に安達に電話したんですよね。『ちょっと先に辞めるわ』って言ったときに、『俺もちょっとしんどいかも』みたいな話はしてましたね」
「安達がどういう存在か……うーん、どう言葉で言っていいかわかんないですけど、やっぱ彼がいないと、僕もここまでできてなかったと思いますし。それこそ3連覇もなかったと思います。
なんて言ったらいいか、難しいですけど、僕の中ではなくてはならない存在ではありましたね。本当になんでも話しましたし。それこそね、どうやったら(チームが)勝てるやろうっていう話は何回もしてきました」
「苦しいときもよかったときも彼と一緒に経験できたんで、それは本当に僕の中でもすごい宝物なんですよ」
安達は指導者としてチームに残ることを決めた。しかし、岡田は安達とは違う道を歩む。彼はこれからどんな未来を思い描いているのだろうか。
「僕はまだ全然技術不足っちゅうか、知識不足っちゅうか。今の僕がやれることは知れてると思うんで。もっともっと勉強して、いろんなことを身につけないといけないと思うんです。僕は大きいケガはなかったんですけど、小さいケガ、特に肉離れとかは多かったんです。
その辺の体のこと、トレーニング法なんかを勉強したい。あとはやっぱり僕は打つことが専門なので、体のことと技術を繋ぎ合わせて、選手が困ったときには何か力になりたいなと思ってます」
引退後のビジョンは明確だ。
「高校を出て19年間、僕はオリックスしか知らないんで。オリックスのいいところももちろんありますし、他のチームのいいところも勉強したいなと思っています。それこそ12球団すべての球団を見に行きたいですけど、野球に限らずいろんなスポーツも見に行きたいですね。
他の競技の選手との交流って、今まであんまりなかったので。アメフトとかラグビーって『肉離れはケガじゃない』みたいに言われるじゃないですか。どういうトレーニングをしているのか気になります」