私の人生最大の損失─私の投資体験・失敗篇
その甘い判断には背景があった。バブル経済のなかで、シンクタンクの仕事に大量の発注が舞い込んでいた。そのため私は常時20本以上のプロジェクトを同時進行させていた。まだ「働き方改革」など影も形もない時代だ、私は毎日、深夜零時を超えて働いた。
その結果、30代を迎えたばかりの私の月給は100万円にも達していた。しかもお金を使う時間はほとんどなかったから、あぶく銭が山のように貯まっていたのだ。それをこともあろうに日経平均株価連動の投資信託に一気につぎ込んでしまったのだ。
その投資信託は、日経平均株価が1万円を割りこんだところで損切りすることになった。どこまで下がるのかわからず、怖くなってしまったからだ。私の人生のなかで被った最大の投資による損失だった。
最近、私が「株価は最悪10分の1になる」と公言していることに対して、多くの人から「妄想を語るのはやめろ」とか「そんなことを言うから信用を失うのだ」という批判が寄せられている。
34年前の私も同じ批判をしていたかもしれない。
ただ、1930年代のアメリカでは、実際に株価は10分の1になったし、1990年代以降の日本でも株価は5分の1に下がっている。「株価の大幅下落」という予測を頭ごなしに非難するのは、投資依存症に足を踏み入れている何よりの証拠なのだ。
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