適期は3月下旬から6月半ば、9月下旬から11月下旬

――登山初級者・年配者に、登山する上でとくに気をつけてほしいことはなんでしょうか?

登山口から日帰りで登れる山ばかりを選定しましたから、まず好天の日を選んで登ってほしいですね。

低山(概ね標高1200m台以下の山)が中心ですから、真夏の登山は暑すぎて著しく体力を消耗するし、登山自体が快適とは言えません。

登山の適期は山にもよりますが、概ね3月下旬から6月半ば、9月下旬から11月下旬とした方がいいと思います。ただし、雪が降らないか、降っても少ない山であれば、その限りではありません。むしろ、大気が澄む晩秋から初冬は、枯れ葉を踏んでの陽だまりハイキングが楽しめます。

登山を始めるという人は、少なくとも登山靴と雨具だけはよい物を揃えてください。また、最初のうちは登山経験者と一緒に登るようにして経験を積むのがいいですね。年配者の方も一緒に登ってくれる年少の経験者がいると安心です。

また登山コースにはコースタイムという一般的な所要時間が目安としてありますが、それに惑わされることはありません。私はコースタイムの1.5倍、ときには2倍も時間をかけて登ります。ゆっくりとマイペースで登れば、見落としそうな草花や昆虫、野鳥なども見ることができます。

「ゆっくりでも登っていれば、きっと山頂に立てる」、それが『温泉百名山』と続編『日帰りで登れる 温泉百名山』の選定登山を通して得た、私の今更ながらの教訓でした。コースタイムを超えるスピードで、ひたすら山頂を目指していた若い頃の登山とは明らかに質が異なります。これが初級者や年配者が山に親しむ極意ではないでしょうか。

この秋おすすめの赤倉岳(向かって左端)
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赤倉岳とセットで楽しめる酸ヶ湯(すかゆ)温泉
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――今回は2年間で登られたわけですが、かなりきつかったのでは?

はい、2年間といっても、2023年は4月にスタートして12月初旬まで。冬期の積雪期は登りませんから、2024年は3月30日が最初の登山。6月上旬でようやく完結しましたが、登山できたのは正味約1年間でしたし、範囲も北海道から九州までですから、スケジュールは過酷でしたね。

2023年には悪天候のためやむなく登り返した山を含めると92座、2024年は13座登りましたが、登頂はしたものの諸条件で掲載を断念せざるを得なかった山が9座も出てしまったのにはまいりました。

2024年5月で喜寿(満77歳)を迎えましたから、さすがに、体力は落ちました。なんとか気力を奮い立たせて、ようやく完結できたというのが正直な感慨です。

その意味では、最後に掲載を断念した阿蘇の根子岳の補充に、喜寿を迎えてから登った九州・九重山の大船山(6月3日)と平治岳(同5日)は、折からミヤマキリシマが満開ということもあって、強く印象に残る山となりました。