中心選手に投げるほうが簡単

過去の名選手たちを振り返ってきましたが、現在担当しているバッターたちも、負けていないと思います。

今、私が担当しているバッターは、柳田悠岐選手、近藤健介選手、中村晃選手が固定ですが、今年は柳田選手が離脱しているため、その代わりに柳町達選手、あとは場合によって栗原陵矢選手や正木智也選手、周東佑京選手に投げます。

NPBを代表するようなバッター、チームの浮沈を握るような大事なバッターを担当させてもらっていることには責任も感じますし、やりがいも覚えます。

(写真はイメージ)
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でも本当は、こういう中心選手に投げるほうが打撃投手は楽なんです。

技術的に未熟なバッターだと、ど真ん中にいっているのにミスショットすることもあります。すると打撃投手は、「あれ、回転が悪かったかな」とか「スピードがバラついていたかな」とか、私が悪かったのではないかと不安を感じるようになってしまいます。

先にも述べましたが、打撃投手は常に「できて当たり前」という重圧にさらされているので、だんだんと疑心暗鬼になって悪循環にはまっていってしまうのです。

その点いいバッターは、どこに投げても、ちょっとズレてもきれいに打ってくれるので、逆に楽な気持ちで投げられます。すると球も良くなっていくという好循環に入っていきます。

そう考えると、若い打撃投手はこのハードルを乗り越えて、未来の一流選手と一緒に成長していく必要があるといえます。

職業・打撃投手
濱涯泰司
職業・打撃投手
2024年10月9日発売
990円(税込)
176ページ
ISBN: 978-4-8470-6708-2

打者に「気持ちよく打ってもらうこと」が役目の打撃投手。常に同じ軌道にボールを投げる再現性が求められる。そんな精密機械のような仕事を選手から転じ、25年間続ける男の矜持とは——。

・マシンと投手との役割分担
・打撃投手の仕事は打ちやすい球を投げること
・柳田は打撃練習で雰囲気が変わる
・工藤監督には「成績表」を提出していた

……など、ホークスを支えてきた打撃投手が、その仕事の全貌を余すことなく語る。選手から転向する際の葛藤や小久保、柳田など数々の大打者たちを「育てた」エピソードなど、プロ野球ファン垂涎の一冊。

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