リフォーム、貴金属の買取り…すべて断っていた 

しかし人影は見えず、男性はとっさに子供が遊びで使っていた厚紙を丸めた棒を手に取った。

「その棒で床を叩きながら、『誰だ? 誰かいるのか?』と叫ぶと『見つかった』という若い男の声がして、ガチャガチャとガラスの音などとともに走り去るような気配がありました。

まず母親の安全を確認してから、廊下やあたりの様子や部屋の様子を確認すると、割れた窓ガラスで犯人が手や足でも切ったのか、そこらじゅうにポタポタと血が垂れた跡が残っていました。

血痕は母親の寝室の前まで垂れていたので、もうちょっとで母親の部屋に入るところだったのかとゾッとしました。

報道で知る一連の強盗の手口を考えるといきなり殴りつけて縛りあげるわけですから、本当に被害がなくて良かったですよ。

母親はトイレで目が覚めて用を足し部屋に戻ってふとんに入った直後、ガラスが割られたということで起きていたんです。ただ、その物音も2階で何か物でも落としたのかなと思っていたそうです」

投げ込まれたブロック塀(撮影/集英社オンライン)
投げ込まれたブロック塀(撮影/集英社オンライン)

母親に状況を説明しているころ、妻の110番通報を受けたパトカーがやってきた。通報から5分も経っていなかったという。

「最初はパトカーが来て、駅前の交番の方や鎌ヶ谷署、船橋署からも応援が来て『鑑識や警察犬も来ます』とお話をされました。

それからもうひっきりなしに人が出入りして朝8時すぎまでバタバタしていました。10人以上はきていましたよ。後から思い返してもなぜウチが?って思いますよ。本当に下調べをされたような記憶がまったくないんですよ。

リフォームだとかの電話も来ましたが全部断っていましたし、貴金属の買取りの電話もあったけど『ウチには何もないですよ』って断っていました。本当に何もないんでね。

誰かが訪ねてくるとかもなかったですし。ただ、オレオレ詐欺の電話はやたらかかってきますし、そういった電話に気をつけるような放送がよくあったのは確かですけど」

床に血痕が…(撮影/集英社オンライン)
床に血痕が…(撮影/集英社オンライン)

事件から10日経っても、当時の恐怖はなかなか拭い去れないという。

「いや、怖かったですよ。ほんと。棒で床を叩いて叫んでる時、たぶん震えていたと思いますよ。自分でもよく声が出たなって思うくらい。子供もいたし、家族を守らなきゃって一心だったんだと思います。

今でも時間が経てば経つほど怖くなってきて。夜は怖いし、いったん寝ついても、目が覚めると物音が気になったりします。朝起きれば大丈夫かなって家の周りをグルって見て回ったりしています。それでも家族の誰もが怪我もしませんでしたし、それは不幸中の幸いだった思います」