羨ましくなるのがイヤだから周りを見ない
スー 自分で選ぶという感覚がなくても、人生って進んでいくの? 逆に新鮮かも。私にはやりたいことも夢も目標もないけど、それでも選ぶ感覚はしっかりあるな。主体は自分っていうか。選べば選ぶほど、可能性は広がっていくって思ってるし。
扉を開けたら、そこにまた新しい扉がドドーンと幾つも出てくる感じ。常に新しい扉が用意されていると根拠なく信じてる。選ぶの面倒くさいなーというのは何度もあったけど。そういう場面に出くわすと、サクちゃんはどう思うの?
サク 隣の人が楽しそうにカードを選んでいても、いいなとか羨む気持ちもあまり起きなかった。
スー それもないの??
サク いいなーって羨むのは虚しいのよ。自分とは関係のない、別の星のお話だって割り切る方が楽だから、そう割り切ってたのかも。
スー それはある種の処世術だね。そのときどき最善を尽くしてきただけで、たどり着いた先が「昔からたどり着きたいと思っていた場所」ではなかったってサクちゃん言ってたけど。
サク そう。幼い頃から将来の夢を聞かれても、わからなすぎて答えられなかったのね。未来に旗を立ててそこに向かって進むというやり方を知らないから。目の前にあるカードだけで進んでると、自分がどこに向かってるかわからなくなるのよ。気づいたら、あれ、なんでここにいるんだっけ?って。
ラーメンの一蘭ってあるじゃない。あれと一緒。個人ごとのカウンターに座って、周りを見ないまま、ただ前を向いてる。
スー 味集中システム!
サク 羨ましくなるのがイヤだから周りを見ない。
スー 本来は夢を叶えたい人が夢集中システムを採用するのにね。お互い夢を持たないタイプなのに、背景があまりにも違うな。サクちゃんは周りを羨まないために目の前を見て過ごしてきたのか。
サク そのときはわかってなかったけど、欲を持たず行き先を決めないまま進んでると、気づくと望んでもない場所にたどり着いてることがあるのよ。でも、どこにたどり着いても、そのことを誰のせいにもできない。結局、全部自分で責任を負わないといけないんだよね。
スー そのシステムでやってくのはまずいって気づいたのは何歳くらい?
サク 33、34歳の頃かな。そのときは「まずい」というほどの自覚はなかったかな。いい匂いのする方に進めば、目的地を決めなくてもいい場所に行けると思っていたのに、実際はどこにいても不満ばかりで、あれ? おかしいなって感じだった。
このままだとこの先もいい場所に行けないのでは、と気づいて立ち止まったの。今さら未来に旗を立てるやり方はできないけど、ちょっとずつやり方を変えていこうと思った。
どこに行きたいか、どうなりたいかを決められないのは、「どうせ望んでも無理」と思っていたからなんだよね。
それなら「望んでよし」って、自分で自分に許可を出せば、行きたい場所に行けるかもって思い至ったの。