汚水処理の現場も
2023年8月3日、テレビ東京系の経済情報番組「ワールドビジネスサテライト」(WBS)で、夢洲の万博会場の様子が放送された。
「建設現場の撮影が特別に許可された」として、万博への出展を予定しているパナソニックグループのパビリオン(展示館)の工事現場が登場した。「まだ2週間前に着工したばかり」で、基礎工事として鉄骨などを立てている段階だった。
夢洲全体の引きの映像になっても、まだまだ更地状態の場所が多かった。
僕が足を運んだ時は、さらに何もなかった。写真を撮りビデオカメラを回していると、万博会場予定地の所々に棒が刺さっているのに気がつく。周囲には赤い円錐形のカラーコーンを配置し、明らかに目立たせている。
藤永さんに尋ねると、「これは2区・3区の沈下測定の杭ですよ。西側の1区の管は、地中にたまるメタンガスなどのガスを放出する管です」。
夢洲の2区・3区は、建設残土や浚渫(しゅんせつ)土砂で埋め立てられ、1区は一般家庭や事業所から出るゴミの焼却灰やスス、下水汚泥などが投棄されている。そこから有機物が発酵しメタンガスや硫化水素・一酸化炭素などのガスが出るので、それを抜くための管だという。
実際2024年3月末、このメタンガスが原因とされる爆発事故が、万博会場で建設中のトイレ棟で起きた。けが人こそなかったが、夢洲の土地の安全性を問う声が改めてネットを中心に流れることとなった。
移動すると、IR予定地には水たまりがあった。たくさんの小さな野鳥が群れている。安全な場所に車を停め、歩いて海沿いに向かう。
そこでは廃棄物の埋め立てによって生じる汚水を処理していた。フローティングエアレーターと呼ばれる廃水浄化設備で、水を空気にさらし、「曝気処理」をする。その装置が「ブゥーブゥー」という音を周囲に拡散していた。
この汚水処理場から細い歩道を隔てた反対側では、排水管の下で泡立つ水を目撃した。薬品処理によって生じる泡のようだ。歩道には、緑色のドラム缶が10個以上散乱していた。缶に書かれた名称は「流出油処理剤」で、天ぷら油などを固める薬剤だ。きっと、業務用廃油が持ち込まれていたのだろう。