なぜ情報公開制度が正しく機能していないのか
市民が行政運営で知りたいことを役所に聞くと、役所にとって都合の悪いことは言葉を濁されてしまうことは日常茶飯事だ。
だが、ひとたび情報公開条例に則って、同じ質問を開示請求に切り替えて行うと、行政機関が作成・保有している文書を必ず開示しなければならなくなる。
この制度が適正に運用されていれば、政官財が癒着した汚職や不正行為の疑惑などのスキャンダルが噴出することは、まずありえない。
行政機関に勤める職員は、市民から疑惑を招くような行為をしてしまえば、たちまち、その行為が開示請求によって露見して批判の的になり、場合によっては違法行為の責任を問われることが最初からわかっているからだ。
誤解を招きかねない事業を進める場合には、逐一、そのプロセスについての途中経過を記録して透明性を確保するはずだ。
ところが、現実はそのようになっていない。
行政機関における情報公開の気運の高まりとともに、一般の市民でも気軽に情報開示請求を行うようになった一方、森友学園の土地取引にかかわる疑惑や、桜を見る会の招待客リスト、安倍元総理の国葬招待客リストなど、あるはずの公文書がなぜか廃棄されていたり、黒塗りで開示されたりすることが、ここ数年、立て続けに起きている。
いったい、何ゆえ、情報公開制度が正しく機能していないのか。何ゆえ、市民が開示を求める文書が廃棄されたり、全面黒塗りで出てきたりするのだろうか。
その基本的な仕組みを、筆者が体験した事例を通して詳しくみていきたいと思う。
【画像1】をみてほしい。これが2018年4月に筆者が行った「来年開業予定の市民図書館について、南海電鉄と話し合ったすべての文書」との開示申出に対する開示決定文書に付属していた「不開示の理由」の一覧である。
どのような理由によって、一部を非開示として黒塗りしたのかが、ここに詳しく書かれていた。