業績低迷、閉塞感漂う社内を変えた社長の起死回生の一手とは 

「『ボタンを押したら 何かはじまる』の文言の通り、ボタンには始まりや変化など、子どもも大人も関係なく何かを掻き立てるようなドキドキ感やワクワク感があると思います」

そう語るのは島田電機製作所の5代目社長、島田正孝さん(55)だ。

島田電機製作所5代目社長の島田正孝さん
島田電機製作所5代目社長の島田正孝さん

「日本一予約の取れない工場見学」を施設化し、平日4日間、6時間のみの営業にも関わらず、オープンから2カ月で約5千人が来場するほどの盛況ぶりを見せている。

しかし島田さんが社長に就任した2013年はまだ工場見学も実施していないばかりか、業績も低迷が続き、社内全体には閉塞感が漂っていた。

「売上を上げたいとか業績をよくしたいとか、それは目標であって目的ではない。何のためにこの会社があるのか、どうありたいのか、まずは目的を持とうと考えたんです」(島田さん)

島田電機製作所は1933年に創業。エレベーター用の意匠器具を中心としたオーダーメイドのものづくり企業として都庁や森ビル、東京スカイツリーに虎ノ門ヒルズ、あべのハルカスなど名だたる建築物のエレベーターボタンの製造を手掛けてきた。

しかし、大手エレベーターメーカーの下請けである以上、島田電機製作所の名前が世に出ることはない。

「この会社って世の中から知られていない会社だなって気づいたんです。やっぱり自分たちの仕事が社会にどう認められているのか実感することって必要なんじゃないかなって思ったんですよ」

社員の士気を高めるため、社員向けのカルチャーブックの製作や福利厚生を整えるなどの社内改革を行いつつ、メディアを積極的に活用していくことを決意した。

「メディアって今の世の中の関心事を求めているから、時流に乗っていれば取り上げてもらえるんです。メディアに取り上げられる会社を目指し、さらに今のことを知る機会にもなる。一石二鳥だなって思って」

千葉テレビの出演を皮切りに続々とメディア露出を増やしていき、それに平行する形でボタンをキーホルダーにしてガチャガチャ形式で販売するなど、社外向けにも様々な取り組みを進めていった。

そんな中、息子を持つ母親から会社に一本の電話がかかってくる。これが「日本一予約の取れない工場見学」誕生のきっかけとなった。