「動機の詳細を解明することは困難」?

事件の裁判では「被告人の動機に関する供述はまったく信用することができない」としながらも「動機の詳細を解明することは困難」との不可解な判決文で、一審では求刑どおりの無期懲役。その後、消えたカバンの資料の行方も、被告の動機も解明されないまま、2005年に最高裁で無期懲役が確定します。

事件後、石井さんが所属していた民主党が真相解明に動くと発表していましたが、結局調査は進められませんでした。

石井さんは秘密主義者でした。他人と情報を共有しませんでした。外出するときも行き先を言わないし、どこにいるかわからない。

特殊法人の不正追及を始めてからは、公共事業がらみの闇のルートを調査していることはわかっていましたが、具体的な話は、私にもしませんでした。

泉房穂さん 撮影/内藤サトル
泉房穂さん 撮影/内藤サトル
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事件までの数年間、石井さんは民主党内で「国会Gメン(政治と行政の不正を監視する民主党有志の会)」を立ち上げ、原口一博さん、河村たかしさん、上田清司さんらと不正を追及していましたが、国会Gメンのメンバーにも情報は知らされていなかったといいます。

石井さんは秘密主義だったからこそ、黒い情報源も石井さんを信用して、機密情報を渡すことができたのかもしれません。

私としてはご遺族のお力になりたかったので、娘さんの石井ターニャさんにお願いして、段ボール箱の資料を調べさせていただきましたが、他人が読んでもわからないようにしていたのか、文字も読みづらく、事件の手がかりとなるような情報は見つけられませんでした。

残念ながら今もって真相は闇の中です。

わが恩師 石井紘基が見破った官僚国家 日本の闇
泉 房穂
わが恩師 石井紘基が見破った官僚国家 日本の闇
2024年9月17日発売
1,045円(税込)
新書判/256ページ
ISBN: 978-4-08-721330-0

志半ばで命を奪われた男の、よみがえる救民の政治哲学!

◆内容紹介◆
2002年10月、右翼団体代表を名乗る男に襲撃され命を落とした政治家・石井紘基(こうき)。
当時、石井は犯罪被害者救済活動、特殊法人関連の問題追及等で注目を浴びていた。
その弱者救済と不正追及の姿勢は、最初の秘書・泉房穂に大きな影響を与えた。
石井は日本の実体を特権層が利権を寡占する「官僚国家」と看破。
その構造は、今も巧妙に姿を変え国民の暮らしを蝕んでいる。
本書第Ⅰ部は石井の問題提起の意義を泉が説き、第Ⅱ部は石井の長女ターニャ、同志だった弁護士の紀藤正樹、石井を「卓越した財政学者」と評する経済学者の安冨歩と泉の対談を収録。
石井が危惧した通り国が傾きつつある現在、あらためてその政治哲学に光を当てる。

◆目次◆
はじめに 石井紘基が突きつける現在形の大問題
出版に寄せて 石井ナターシャ
第Ⅰ部 官僚社会主義国家・日本の闇
第一章 国の中枢に迫る「終わりなき問い」
第二章 日本社会を根本から変えるには
第Ⅱ部 “今”を生きる「石井紘基」
第三章 〈石井ターニャ×泉房穂 対談〉事件の背景はなんだったのか?
第四章 〈紀藤正樹×泉房穂 対談〉司法が抱える根深い問題
第五章 〈安冨歩×泉房穂 対談〉「卓越した財政学者」としての石井紘基
おわりに 石井紘基は今も生きている
石井紘基 関連略年表

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