特殊法人とはなにか

特殊法人は、「公共の利益または国の政策上の特殊な事業を遂行する」として、特別法によって設立された法人です(『大辞泉』)。主に第2次大戦後の経済復興のため、道路、住宅、鉄道など基本的な社会資本(インフラ)を整備するために作られました。

公団(旧・日本道路公団、旧・住宅・都市整備公団など)、公庫(旧・住宅金融公庫など)、特殊会社(電源開発株式会社など)などの形態で、戦争によって壊滅的な打撃を受けた日本社会を建て直すため、一定の役割を果たしました。

歴史的には、1960年代から高度経済成長をめざして、重工業主体の産業政策が推進され、この間、民間企業が大きく成長しました。石井さんは、池田勇人内閣(1960〜1964)の国民所得倍増計画がその目標を達成した1970年代前半には、「本来であれば特殊法人は解散して、経済を市場に委ねるべきだった」と考えていました。福祉や教育、外交など、政治は次なる目標に向かうべきであったと。

しかし実際には、政・官・財の癒着が壁となり、民間経済をサポートし、活性化させるという本来の役割を終えた特殊法人はその後も残り、自己増殖を始めました。

政・官・財の権力システムは、「〜開発法」「〜整備法」など後付けの根拠法を次々と作り、公共の投資事業のための「特別会計」を増やし、行政指導の権限と経営規制を拡大して、金融・建設・住宅・不動産・流通・保険などの事業分野、鉄道・空港・道路その他の交通運輸産業、農業・漁業・林業の分野、さらに通信・電力など、ほとんどすべての産業分野で、市場を寡占するようになります。

その後も経済発展とともに特殊法人は増加し、政治家と官僚は、財団法人や社団法人なども含む膨大な数の、子会社、孫会社を作りました。これらのいわゆる「ファミリー企業」は、下請け発注業者である特殊法人から優先的に仕事を回され、事業を寡占します。定年を迎えた官僚は、管轄下の特殊法人やファミリー企業へ続々と天下り、法外な給料や退職金を何度も手にします。

これでは民間にお金は回ってきません。

石井さんが最後に調査した2001年の時点で、特殊法人は77団体。関連会社・法人は約1200社、そしてファミリー企業まで含めると2000社以上、役職者数は少なくとも100万人。

石井紘基さん 写真/共同通信
石井紘基さん 写真/共同通信

さらに、特殊法人の公益事業や委託業務で生計を立てている民間企業や地方自治体まで含めると、特殊法人関係の実質就業者数は300万人規模で、これは当時の日本の全就業人口の5パーセントになると推定しています。

石井さんの追及はここから「特別会計」に及び、国会での爆弾発言となります。