日本では市場のおよそ半分を「官制経済」が占めている
すこし長くなりますが、このまま続けます。
「一方でGDPは名目で約510兆円ぐらいですね。そうすると、このGDPに占めるところの中央政府の歳出というのは、何と39%に上ります。ちなみに、アメリカの場合は連邦段階で18%、イギリスの場合は中央政府で27%、ドイツも12.5%、フランス19%、大体そんなふうになっているわけです。
さらに、これに、政府の支出という意味でいきますと、地方政府の支出を当然含めなければなりませんから、我が国の場合、これも純計をして、途中を省きますが申し上げますと、大体これに40兆円超加えなければなりません。そうすると、一般政府全体の歳出は約240兆円というふうになるんです。これは何とGDPの47%であります。(編集部註:図2、3参照)(中略)
これは実は、市場というものと権力というものとの関係において、我が国では権力が市場を支配している。(中略)その結果、市場経済というものを破壊しているというところがあるんです。こうした我が国の実態というものが、先ほど申し上げました分配経済と呼ぶべきものですね。私の言葉で言えば、私は『官制経済』というふうに申し上げているわけであります。これは、ここでは本質的に資本の拡大再生産というものは行われない、財政の乗数効果というものは発揮されない、こういう体制にあるんです」
GDP(国内総生産)における、国の純粋の歳出(特別会計を含む国家予算に地方政府の支出を加えたもの)の比率は、47パーセント。
つまり日本では市場のおよそ半分を、特殊法人系列による「官制経済」が占めていることになります。図2、3を見てもわかるように、欧米と比べて民業が極めて圧迫されている状況で、市場経済が正常に機能していないことになります。質問は熱を帯び、最後に「本当の国民負担率」が明かされます。
「一方、国民負担率というものは、我が国の場合は、私はもう今既に限界に達しているんだと思うんですね。財務省の数字によりますと、潜在的な負担率も含めて48%と言っておりますが、しかし、これは先ほど申し上げました特殊法人等から生ずる負担というものがカウントされておりません。財務省が昨年9月に出したところの特殊法人等による行政コストというのは、年間15兆5000億円くらいあると言うんです。
こういうものを含めると、国民負担率、これは当然、例えば電気にしても、ガスや水道なんかのそういう公共料金、運賃や何かも含めて、こういうものは特殊法人という、認可法人や公益法人も入りますが、総称して特殊法人というものによって、このコストが乗ってくるわけでありますから、そうした将来にかかるコストと、現実に日常的にかかるところのコストというものがオーバーラップしてあります。
こうしたものを含めた国民負担率というものは、もう60%に近づいているだろうというふうに考えられます。日本の不安定な社会保障の実態というものとあわせて考えると、これは6割近い国民負担率というものは非常に異常な状況であると言わざるを得ないと思います。
(中略)
今まで申し上げましたことについて、財務大臣の御認識を伺いたい。どうですか」
塩川正十郎財務大臣
「御意見としてお述べになりましたのでございますから、私が否定するようなこともございません」
誰も気づかなかった裏の国家予算「特別会計」を掘り起こし、「本当の国家予算と国民負担率」を開示した石井さん。前年の国会では、経済財政政策担当大臣の麻生太郎と、財務大臣の宮澤喜一に、「本当の国家予算」についてズバリ聞いていました。
「そこで、麻生大臣にちょっと聞いてみたいのは、日本の国家予算というのは、歳出でもいいですし歳入でもいいのですが、幾らぐらいなんですか」
麻生経済財政政策担当大臣
「81兆で、出ているとおりだと思いますが」
石井
「では、宮澤財務大臣にひとつ教えていただきたいのですが、日本の国家予算のトータルというのはどのぐらいの規模ですか。何兆円という単位で結構でございますが」
宮澤財務大臣
「一度調べまして、お答えいたします」
(2001年4月4日衆議院決算行政監視委員会)
麻生さんは単純に、一般会計の81兆円を国家予算と思いこみ、旧大蔵省のエリート官僚出身の宮澤さんは、答えられなかった。ふたりとも首相候補と目されていた政治家です。
国家の中枢を揺るがす「爆弾発言男」石井紘基。このころからすでに、エスタブリッシュメント(体制側)に警戒されていたのかもしれません。